優秀なら直接博士から
アメリカの大学院の大きな魅力として、日米教育委員会の笹田千鶴さんは「世界中の優秀な学生とのネットワークが作れることです」と語る。在学中に切磋琢磨(せっさたくま)し、卒業後も自身の世界を広げる強力な人脈となる。教授陣も世界各国から集められている。また、「批判的思考力や課題発見、問題解決能力が徹底的に求められる」というアメリカ式の教育は、独自の思考が必要な大学院での学びに適していると言える。
具体的な制度を見てみよう。まずは大きく、学術系大学院と、経営大学院や法律大学院などの専門職大学院に分けられる。
専門職大学院は、修士課程までで終了する分野がほとんど。授業が中心で、一般に修士論文は要求されない。学部で同じ分野を修得していることは必ずしも求められないが、その分野の基礎知識や実務経験が重視される。
学術系大学院の修士課程では、一般に30~60単位の授業の履修が必要で、成績評価はアメリカ式評価で平均B(GPA3・0)以上が必須。加えて、日本と同様、修士論文の提出と口頭試問が課される場合が多い。修士論文が無い代わりに、履修科目数が多く最後に筆記理解試験が課される場合もある。修士課程修了には専門職、学術系ともに平均1、2年かかる。博士課程に進むには、一般に、修士課程レベルの総合的な学力や専門知識・研究能力を審査する試験を通過する必要がある。合格して初めて博士号の「候補生」となり、論文執筆のための研究に取り組む。
日本と異なる制度として、修士課程を経ずに直接博士課程に進むプログラムもある。この場合、修士課程の授業に対応するものを多数履修し、前述の審査試験も通過する必要がある。厳しい大学院では、その段階で基準に満たないと修士号の扱いで終了になってしまう。独自に研究を行う能力を求められる博士課程に直接入学するため、入学時点で何らかの研究業績があることが期待される。博士課程の取得年数は、分野によるが平均で大学院課程入学後7、8年に及ぶという。笹田さんは「優秀な博士の学生には大学院から助成金を出すことも多く、その分成果を厳しく求められます」と、要求水準の高さを強調する。その分、取得した博士号は研究・実社会両面で、国際的に高く評価される。
大学院の受験で求められるものは、…
続きは、2014年6月10日大学院特集号でご覧ください。
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