高倉潤也研究員(国立環境研究所)や沖大幹教授(未来ビジョン研究センター)らは、複数分野にわたる地球温暖化による世界全体の経済的被害額を推計し、被害額を最小で世界のGDPの0.4〜1.2%相当に抑えられることを明らかにした。成果は9月25日付の英科学誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』に掲載された。
地球温暖化の影響を測る上では、経済的被害額を推計する方法がある。しかし温暖化対策の方法などで被害の程度は変わる上、将来の気候予測は不確実なため、推計は困難だった。
今回は海面上昇など、温暖化の影響を受けるとされる九つの分野で推計を実施。将来の温室効果ガス排出量についてはRCP、社会経済状況についてはSSPというシナリオを用いた。結果は4段階のRCPと5段階のSSPを組み合わせた20通りで算出した。
2016年発効のパリ協定で定められた、世界の平均気温上昇を今世紀末時点で産業革命前から2℃未満に抑える目標が達成されたシナリオでは、被害額は世界のGDPの0.4〜1.2%相当に抑えられることが分かった。一方最悪のシナリオでは、被害額は世界のGDPの3.9~8.6%になった。
他の結果から、開発途上国が多い地域では温室効果ガス排出削減だけでなく、社会経済状況の改善が被害軽減に重要であることも判明。地球全体で見た場合、人為的な温室効果ガス排出削減や社会経済状況の改善が被害額軽減につながるかどうかは、短期的には気候予測の不確実さのため不明だが、中長期的には被害軽減の可能性が高いことも示唆された。
この記事は2019年10月8日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。
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