学術ニュース

2020年6月22日

2種類の塩基を同時に置換できる、ゲノムの次世代編集ツール開発

 森秀人さん(慶應義塾大学大学院)、石黒宗特任研究員(東大先端研)らは2種類の塩基を同時に置換できる新たなゲノム編集技術を開発した。生物のDNA配列をより高い自由度で編集できるようになり、生物学・医学分野での幅広い応用が期待される。成果は1日付の英科学誌『ネイチャー・バイオテクノロジー』(電子版)に掲載された。

 

 近年、細胞内ゲノムDNA中の、狙った配列を自在に編集できる細胞内ゲノム編集技術が急速に発展しており、生物学分野に大きな変革をもたらしている。しかし、これまでの塩基編集ツールで可能な塩基置換パターンは、アデニン、チミン、グアニン、シトシン(A・T・G・C)の4塩基から成るDNA塩基配列のうち、C→T、A→Gのいずれかに限られており、同時の実行は不可能だった。

 

 研究チームは、狙ったDNA配列において、C→T、A→Gを同時に置換できる新たな塩基編集ツール「Target ACEmax」の開発に成功した。Target ACEmaxと既存のツールでヒト培養細胞のゲノムを編集し、大量のDNA配列を同時に解読できる超並列DNAシークエンシングという技術を用いて結果を調べたところ、今回開発されたツールが最も異種塩基を同時に編集する効率が高いことが判明した。既存のツールとの比較で、今回開発されたツールが意図しないDNA領域、RNA分子を編集しづらいことも判明した。


この記事は2020年6月16日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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