王涛(ワンタオ)特任研究員(理学系研究科、国立天文台)らは110億年以上前の宇宙に、星を活発に生む巨大銀河を39個発見した。理論上は想定外で、宇宙の進化の謎が深まる。成果は8日付の英科学誌『ネイチャー』(電子版)に掲載された。
過去の宇宙の銀河では、星からの光がちりでさえぎられ、より波長の長い赤外線が銀河から放出されやすくなる。加えて宇宙の膨張で波長が引き伸ばされるため、過去の宇宙の銀河を捉えるには、波長0.1~ミリのサブミリ波を観測する必要がある。従来宇宙を観測する際に用いられるハッブル宇宙望遠鏡は、波長の短い波しか捉えられず、遠方の天体の観測に適するスピッツァー宇宙望遠鏡は画像の解像度が低かった。
王特任研究員らは今回、スピッツァー宇宙望遠鏡による画像に写っており、ハッブル宇宙望遠鏡による画像には写っていない天体を63個選出。主に波長0.35~4ミリの波を捉えるアルマ望遠鏡で、うち39個からサブミリ波を検出した。
波の強度や、アルマ望遠鏡による高解像度の画像から、39個全てが110億年以上前の宇宙に存在する、星を活発に作る巨大銀河だと判明。質量は太陽数百億個~千億個分と、110億年以上前の宇宙としては巨大といえる。波の明るさから、今回発見された銀河では天の川銀河の100倍のペースで活発に星が生まれていることも判明した。
王特任研究員らは今回発見された銀河を、多くの銀河の集団の中心に位置し太陽数兆個分の質量を持つ「巨大楕円銀河」の祖先と推定。しかし理論上、110億年以上前の宇宙で活発に星を生む巨大銀河がこれほど多く存在することは予測されていない。アルマ望遠鏡や、今後打ち上げられる可能性がある宇宙望遠鏡などの観測による、研究の進展が期待される。