キャンパスライフ

2020年6月5日

【各学部4年生に聞く 学生生活紹介】③理Ⅱ→教養学部、工学部

 各学部の4年生に進学の理由や学部での授業、生活について話を聞き、ウェブサイトやパンフレットだけでは知ることのできない生の声を紹介する。今年は対面での学部ガイダンスが中止され、特に情報を得る機会が少ない。どの学部や学科に進むか決めきれていない人はぜひ参考にしてほしい。(時間割は3年次のもの)

 

・理Ⅱ→養 統合自然科学科統合生命科学コース

 

高島 芳樹(たかしま よしき)さん

 

自分だけの時間割で興味開拓

 

 漠然と人間やその社会に関わる学問に興味があり、第一段階ではシステム創成学科や心理学系の学科を志望していた。しかし点数が足りず「第二段階では半ば直感的に統合自然科学科を志望しました」。進学以前は生命科学に縁はなかったが、内定後に勉強していく中で「人間社会も生命も、複雑ながら高度な秩序を持っている点で共通しているということに気付きました。結果的に生命科学は興味のど真ん中でした」

 

 統合自然科学科の面白い点は、他分野との交流が多いことだという。「物理をやっている教室の隣では認知科学の授業が開かれていたりと、とにかく他分野への垣根が低いです。他学部に比べ要求される前提知識が少なく門戸が広い印象があるので、初学者でも見識を広げやすいと思います」。同時に「初めは知らないことが多くて当然」という感覚を持てるようになったという。「おかげで謙虚な姿勢で学べるようになり、新しい知識を得る喜びも増しました」

 

 加えて「時間割のテンプレ」が存在しないため、興味に従って進路を柔軟に変えることができるという。「自分の選択次第で既存の学問の枠組みにとらわれず学べるので、一人一人が多分野に触れられるチャンスを持っています。逆に自主的な探究をおろそかにすると、学科の面白さを味わい切れないかもしれません」

 

 印象的だったのは、セミナー形式で論文を読む授業。「前期教養課程で教わる既に大成した知識の量に比べ、最先端の論文に載っている成果は、ほとんどが微々たるものです。小さな成果の積み重ねが科学においていかに大切かを痛感しました」。他にも発展途上の科学を味わえる授業は数多い。「従来の還元的な手法に対し、数理的・構成的に生命現象にアプローチする授業が興味深かったです。次の科学の主流が垣間見えた気がします」

 

 卒業後の進路は、大学院進学が約7割と多く、高島さんも現在所属するラボに進学予定だ。その後は未定だが「現在取り組んでいる研究がとても面白く、他により面白いことに出会わない限りは研究者になろうかと考えています」。

 

 

・理Ⅱ→工 応用化学科

 

黒瀬 峻平(くろせ しゅんぺい)さん

 

忙しいからこそ要領よく

 

 きのこに興味を持ち理Ⅱに入学するも、将来性を考えて薬学部志望に。しかし、薬の名前などの暗記量が多いと先輩から聞き、分子のデザインに関する内容が学べる化学系の学科を考えるようになった。化学が学べるのは主に理学部の化学科と、工学部の化学生命工学科、化学システム工学科、応用化学科の四つ。「土日に活動するワンダーフォーゲル部と両立でき、かつ程よく実験があるのが応用化学科だったので選びました」

 

 1Sセメスターは比較的高い点数が必要な薬学部を志望していた関係で、成績が良かったので、進学選択は余裕があった。「他の人が単位さえ取れれば良いと思っている難しい科目こそ、しっかり勉強して成績に差をつけるチャンス。無駄な時間を削り、友達と協力して要領よく試験勉強することが大事です」

 

 化学系の学科の中では忙しくない方とはいえ、週に3日は実験があり、学部3年の間は前期教養課程よりずっと忙しい。「実験はうまくいけば早く終わるし、失敗すると午後7時になってやっと帰れます。実験もてきぱきと要領よくやることが大事です」。ほとんどの授業が化学に関連するので、化学が好きな人にはとてもお薦めだという。主に使用する工学部5号館は外観は古いが、意外と設備はそろっている。「今まで教科書でしか見たことのない反応や高価な試薬にも触ることができるので、とても新鮮でした」

 

 工学部の三つの化学系の学科は基本的に同じ授業を受けるが、五月祭の出し物は学科単位で行った。学科の人数は50人ほどで全員と仲良くなるのは難しいが、実験を共にする4、5人とは特に仲良くなれるそうだ。

 

 卒業後はほとんどの人が大学院に進学する。黒瀬さんも分子センサーの研究者を目指すために大学院に進学する予定だが、いつかはきのこの研究をしたいと語る。

 

 内定先が決まった後の動きについても注意が必要だという。「進学選択が終わった後に開かれる学部ガイダンスで学科の顔合わせがあります。僕は行かなかったら2Aセメスターの試験対策を全て自分ですることになってとても大変だったので、絶対行った方がいいです」


この記事は2020年5月26日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:新型コロナ感染拡大下の進学選択(上) ガイダンス、理では参加者大幅増
ニュース:新型コロナ ネコの間で容易に感染 明確な症状は出ず
ニュース:生協実施アンケート 学部生の半数が経済面に不安
ニュース:産学協創 日本ペイントHDと持続可能な社会の実現へ
ニュース:仮設体育館解体へ 駒場Ⅰ 新体育館は竣工済み
企画:「教養」、身に付いてますか? 駒場のリベラルアーツを考える
企画:各学部4年生に聞く 学生生活紹介 
企画:言語学習のモチベーション 新たに外国語を学ぶ人たちへ
研究室散歩:@歴史学 大塚修准教授(東京大学大学院総合文化研究科)
漫画×論評:『性別「モナリザ」の君へ。』吉村旋
キャンパスのひと:河野麗さん(工・4年)

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