軍事研究の在り方などを再検討する日本学術会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」は7日、軍事研究に関する声明案を取りまとめ、軍事目的の研究を行わない従来の方針を継承した。声明案では大学などの研究機関に対し軍事研究と見なされ得る研究の適切性を審査する制度の導入も求めた。
声明案では、2015年度に発足した防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度を「政府による研究への介入が著しい」と批判し、科学者の自主性などが尊重される民生分野の研究資金充実を求めた。学術研究が政府の制約・動員を受けた歴史を踏まえ、研究の自主性・自律性・公開性担保の必要性も強調している。
研究成果の利用については、科学者の意図を離れて軍事転用され、攻撃的な目的にも利用される危険性を指摘。科学者や研究機関は研究資金の出所などに関して慎重な判断が必要だとして、学術分野ごとの特性に合わせたガイドラインの設定を求めている。学術会議としても、研究の適切性を巡り科学者間の共通認識を形成するため、さらなる検討を進めるとした。
日本学術会議は1950年・67年にも、軍事目的の研究を行わないとする声明を発表。しかし、安全保障技術研究推進制度が発足するなど軍事と学術が接近しているとの認識の下で昨年6月に検討委員会を設置し、安全保障に関わる事項と学術とのあるべき関係について再検討を開始していた。声明案は24日の幹事会での審議を経て、4月13・14日の日本学術会議総会で採決される見込みだ。
この記事は、2017年3月21日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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