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2024年9月11日

【学費問題】東大、記者会見を実施 授業料引き上げ最終決定は9月中か

 東大は授業料引き上げの検討状況について、9月10日に記者会見を開いた。会見では、同日に学生向けに公表された授業料引き上げ案について説明があった。学士課程は来年度4月入学者から、修士課程は2029年度入学者から引き上げを行うことなどが盛り込まれた同案について、早ければ今月中に最終決定すると明かした。国立大学の授業の標準額が今後上げられた場合にさらなる授業料の引き上げをする可能性は、現時点で検討していないとした。

 

決定プロセス引き上げは9月中に決定か

 

 案は同日に大学の局長レベルの会議で承認されたことを受けて公表された。藤井輝夫総長は会見で、学内での手続きが順調に進めば、9月末までに最終決定できる見通しだとした。学内の複数の議決を経た後、総長が最終決定をする。学生の意見を反映できた案を作成できたとして、再度総長対話を行う予定はないとも明言。一方で、学生へ理解をしてもらう機会の確保は考えるとした。正式に決定された場合、来年度学部入試受験者へは、募集要項にその旨を記載し、11月に実施予定の入試に関する記者説明会を通して説明すると入試担当の藤垣裕子理事・副学長は話した。

 

藤井輝夫総長=10日、本郷キャンパス本部棟で(撮影・岡拓杜)

 

学生支援の拡充措置

 

 授業料免除の対象を世帯年収400万円以下から600万円以下への拡充を、学士課程は来年度から、修士課程は29年度から行う案も示されている。世帯年収600万円以上900万円以下の学生も出身地の遠さや多子世帯など、個別の事情を考慮して一部免除の実施についても藤井総長は言及した。親の収入があるものの親に頼れない学生などがいることもわかったとして、きめ細やかな対応をしたいとし「改定案が動き出すまでには何とかはっきりさせたい」と述べた。さらに、自身でも東大の奨学金のサイトを見て、自分が基準に該当するか分かりづらく感じた上、入学しないと申請が実際に通るかわからない問題点もあるとした上で入学前から基準に該当するか分かるようシミュレーションができるようにしたいと述べた。

 

増収分の使途学習支援システム「UTONE」の機能拡充にも言及

 

 藤井総長は授業料引き上げによる増収分(28年度末で概算年間13.5億円)の活用先として(表)の内容を説明した。TA(ティーチング・アシスタント)の全学的な時給の増額やモバイルバッテリーの貸し出しや24時間開館を求める学生の声も踏まえた図書館の開館時間の延長、学生の経済的な問題に専門家が応じる相談所の設立などを挙げた。機能強化が目指される学修支援システムは、学修情報などを一元的に管理できるシステム「UTokyoOne(UTONE、ユートン)」だという。現在試行段階の同システムについて、森山工理事・副学長は、利用可能にしている一部の学生からの反応が芳しくないとし、大幅に改善するプロジェクトを実施中だとした。「入学時から墓場まで」を目標にし、おすすめの授業の提案や課外活動などの履歴を残せる機能、卒業後も大学につながることのできる機能などを追加することを挙げた。最終的には全学的な展開を目指すが、時期の見通しは立っていないという。

 

(表)教育学修環境改善に向けて、東大が当面の間取り組むとした事項

 

「激変」を理由に大学院への進学を断念しないように配慮

 

 藤井総長は学士課程と修士課程の授業料引き上げのタイミングをそれぞれ来年度と4年後の29年度という案にした理由として、在学生が授業料の「激変」を理由に大学院への進学を断念しないように配慮したためとした。来年度学部入試の受験者にとっても「激変」ではないかという質問については、新入生にはより良い学習環境で学んでほしいので新しい授業料を適用するとした。

 

学生から直接意見を聞ける仕組み作り目指す

 

 授業料引き上げの検討の報道後に学生による反対運動が行われたことについて藤井総長は、検討の段階で唐突な形で報道されたために学生とのコミュニケーションの回路をうまく持てなかったとして、反省の意を改めて発言。学生の声を直接聞ける仕組みが現状は十分にないとして、学生に関わる事柄について一緒に考える仕組みを時間をかけながら作りたいとした。直接的に意見を聞く形が望ましいとして、教養学部学生自治会などが求める自治会と総長との交渉という形式については消極的な態度を示した。

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