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2021年1月31日

「大学債市場」の確立へ 大学債カンファレンス開催

 東大は1月15日、日本証券業協会と共に「大学債/ソーシャルボンド カンファレンス」をオンラインで開催した。東大が昨年、日本の国立大学として初めてとなる「大学債」を発行したことを受け、同債券の社会的意義や大学の資金調達手段としての債券の役割などについて講演やパネルディスカッションを実施。他大学の大学債発行や日本の金融市場における「大学債市場」の確立に向けて、東大をはじめ、大学債に関わる各業界の担当者らが意見を交わした。

 

 「東京大学FSI債(東大債)発行の意義」と題し基調講演を担当したのは東大の大学債発行で中心的な役割を担った坂田一郎副学長。坂田副学長は大学債の第1回発行に対して予定額の6.3倍のオーダーを受けたことについて「(大学債の)200億円という規模から見るとかなり投資家の数が多く、層が多様である」と分析。他大学の発行に関しては「最初の発行ということで一定程度のインパクトが必要と判断し200億円の発行としたが、各大学においては必ずしもこの金額である必要はない」などとし、参加した他大学の教職員らに対し、具体的な債券発行に向けた準備について解説した。

 

 パネルディスカッションには東大の平野浩之副理事、大学債の主幹事会社の一つである大和証券の米上広成氏ら5人が参加し、議論を展開した。平野副理事は大学債発行までの流れについて「(資金を債券で調達するということを)部局長に浸透させていかなければならず、中にはいろいろな考え方を持った方がいる。五神真総長に前面に立って説明をしていただいた」と振り返った。

 

 東大は大学債発行に際し、予定額を大きく上回る1260億円のオーダーを投資家から受け、米上氏も「東大の債券発行の意義に多くの投資家が賛同したと言える」と評した。しかし東大の大学債が市場で高い評価を受けた一方で東大以外で起債した国立大学は存在しない。米上氏は市場の大学債の受け止めについて「東大の発行以降多くの投資家から他の大学の起債の検討状況に関する問い合わせを受けており、他大学の起債に対する期待も非常に大きいと思っている」と見解を述べた。そして、今後他大学の発行が増え、継続的に毎年数千億円規模の発行が実現すれば、金融市場参加者から「大学債市場」として認知されるのではないかと見通しを語った。

 

 カンファレンスで挨拶を行った五神総長は、大学債発行について「(東大が経営体に生まれ変わる)第一歩として大学が自らリスクを取って市場にプレイヤーとして入っていくということは、その決意を分かりやすく伝えるという意味でも極めてインパクトのある効果的な行動だ」とその意義を強調した。

 

 東大が昨年発行した東京大学FSI債(大学債)は日本の国立大学として初めての余裕金を原資とする債券。社会問題解決に貢献する目的で発行されるソーシャルボンドに該当し、集まった資金は東大が掲げるFSI(未来社会協創)に関連する事業に活用される。発行額は総額200億円で、償還期限は40年。現段階で資金の使途は公表されておらず、今後各部局の提案などに基づいて決定していくと見られる。債券の償還には寄付金の運用などから得られる年間10億円の余裕金を使用予定。東京大学新聞社の取材によると東大は余裕金のさらなる拡大を見込んでおり、比較的自由に使える資金の獲得を目的に今後10年で最低1000億円の債券発行を検討しているという。

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