スポーツニュース

2024年11月30日

【ラクロス女子】成蹊大学に涙の勝利 創部以来初の1部リーグ昇格をついに達成

 東大ラクロス部女子(関東学生ラクロスリーグ2部)は、2カ月に渡るブロック戦を4勝1分で終え、2部リーグ首位となった。そして、11月2日、ついに1部・2部入れ替え戦を迎えた。2年前に入れ替え戦で敗北した成蹊大学と再び戦い、9ー4と差をつけて勝利。攻守ともに見事なプレーをみせ、長年掲げてきた「1部リーグ昇格」の夢をついに叶えた。(取材・高倉仁美、吉野祥生)

 

東大|2232|9

成蹊|1102|4

 

 雨が降ったり止んだりのどんよりとした空模様で、天気予報でも夜まで雨予報。しかし、多くの人がこの一戦を見ようと江戸川区臨海球技場へ応援に駆けつけた。両チームの応援が飛び交う中、試合開始。ドローで宍戸桃子(農・4年)が、ボールを獲得すると、東大は序盤から見事な攻撃を繰り広げる。しかし、相手も負けじとボールの前に立ちはだかり隙を与えない。相手が攻撃権を奪いシュートを試みるが、ゴーリー(ゴールキーパー)でチームの守護神である中村キアラ(育・4年)が得点を許さない。再び攻撃権をつかんだ東大は積極的に前進し、吉野ひかり(文・3年)がシュートを決め先制。流れに乗ったまま橋口華奈(養・4年)は走りながらシュートを放つ。審判が手を挙げて得点を認めると、サイドラインからは喝采、選手は互いに駆け寄り喜びの歓声を上げる。最高のスタートを切ったように見えたが、その後相手の鋭いショットで得点を許す。1点のリードで第1クオーター(Q)を終えた。

 

 第2Qが始まり、試合開始4分で相手のシュートが決まり同点に。シュートのタイミングをうかがう中、吉野がグラウンドボールからシュートを決め、再び流れを引き寄せた。途中で東大側の選手の負傷により試合が中断するも、気を立て直して攻撃を仕掛ける。相手の守りに押されるもディフェンスをくぐり抜け相手陣に走り込む。仲菜花(文・4年)はゴーリーの横をすり抜ける鋭いシュートを放つと、ボールはゴールネットへ吸い込まれた。ディフェンスにおいては何度かゴール前まで持ち込まれるも、守護神・中村のナイスセーブで無失点に抑え、前半戦が終了。

 

シュートが入り喜ぶ選手たち(撮影・高倉仁美)

 

 第3Q、応援部のコールが鳴り響く中、再びドローが成功し、ボールを支配する。勢いづけられた東大はあっという間に相手ゴール前まで走り込む。開始わずか1分で、今試合ドロワーとして大活躍している宍戸のシュートが決まる。その後もターンオーバーを与えず、橋口のショットで追加点を獲得。攻守交代し相手は自陣に攻め込んでくるが、ディフェンスの壁は相手をゴール前のクリースへ入れない。粘りの攻撃の末、相手は気迫に満ちたシュートを放つが、守護神・中村は全身でそれを受け止め、ボールはゴールを逸れた。大興奮のサイドラインからは歓声が沸き起こる。その後、両チーム粘りのプレーを見せ、点が入らず8分経過。攻撃権を獲得し、チャンスを見た東大は快足を飛ばして相手陣地へ。沼田沙舞(工・4年)のシュートが相手ゴールネットを揺らす。7点目
を獲得したこの第3Q、試合結果にかかわらず、最後の試合となる4年生の執念が全面に伝わってくる展開となった。

 

優秀ドロワーとして選出された宍戸(撮影・高倉仁美)

 

 5点のリードで突入した最終Q。雨と共に、1部残留がかかった相手の圧迫も強まっていった。ボールを保持しつつなかなかゴールに近づけない中、橋口のシュートが決まりこのQも先制。直後橋口のショットが再びさく裂。勢いに乗ったまま10点目を狙うが、足元の悪さが相まりボールを落とすと、相手はあっという間に自陣に攻め込んでくる。気迫に満ちたシュートを止められず点を奪われてしまった。ここまで9ー3でリードし、勝利もほぼ確実に見えたが、東大は気を緩めない。タイマーが着々と進む中、ボールは陣を行き交うも、両チームとも得点を許さない。タイムが残り30秒を示す中、相手は気迫の4点目を決める。まさに1部リーグの意地を見せたシーンだった。 

 

 試合終了のホイッスルが鳴ると、同時に選手らは歓声を上げながらテントに駆け寄る。長年掲げてきた「1部リーグ昇格」の目標がついに達成された瞬間だった。選手たちが整列し、応援部主導で観客から応援歌「ただ一つ」が歌唱されると、選手たちは涙を流しながら口ずさみ、喜びを噛みしめた。見事な有終の美を飾ったラクロス部女子Celeste。来季は新たな舞台でこれまで以上に熱い試合を繰り広げることになるだろう。新チームの闘志みなぎるプレーに期待が高まる。

 

1部昇格が決まった女子ラクロス部(撮影・高倉仁美)

 

中村キアラ主将(育成・4年)のコメント

 (1部に昇格できたことが)すごく念願だったので、今はもうただただうれしいという言葉に尽きるし、本当に観客の皆さんとか部員のみんなに、今までの4年間と今年の1年間ありがとうという気持ちが強いです。

 

 ここまで全試合負けなしではありましたが、やっぱり今までの2部の相手と今日戦う1部の相手はレベルが違うものになってくると思っていたので、今までの試合とは切り離して、今日1日気を抜かず今日に全部を懸けて戦おうという話をみんなとしていました。

 

 前回の昇格戦は今の4年生が2年生の時で、初めてのリーグ戦に立ったので本当に右も左も分からなくて必死に先輩たちについていく感じだったのですが、そこで負けを経験したからこそ、─本当は去年昇格して自分たちの代で1部で戦いたかったですし─1部昇格の気持ちを常に高く持ち続けられたのかなと思っています。

 

 (試合中、東大に流れがずっと来ていたが)最初の方は勝っていたとしても最後まで何が起こる分からないので、最後の本当に1秒まで、1部昇格することだけを考えてやらなきゃなという気持ちは全員が持っていたので、そこは気を抜かずみんなで集中できたかなと思っています。

 

──今までを振り返ってみてどう思いますか

 下級生もすごく多いチームだったので、初期は基準を高く作るのが難しい部分もあったし、今思うと下級生も結構苦しんだりすることが多かったかなって思っていて。ただそれでもその道のりは全て1部昇格に向かうものなので、その時点での苦しみとか困難で下を向かずに、1部昇格につながるものだと思って、常に前を向いて明るい気持ちでラクロスを楽しむことと、1部昇格に向けてワクワクする気持ちは、チーム全体で常に持ち続けるようにしていました。

 

──応援部やラクロス部男子など多くの応援がありました

 応援の声は本当にものすごくグラウンドに届いていました。数で見ても本当に多かったですし、走り回って応援してくれている人もいて、盛り上げてくれているなとすごく伝わっていたので、それに応えて頑張ろうという気持ちは常に持てたかなと思います。

 

──ラクロスという競技の魅力を教えてください

 ラクロスは結構マイナースポーツなんですけど、その分日本代表や日本一に近づきやすいスポーツ、だからこそみんなで上を目指しやすいスポーツだと思っていて。本当に練習すれば練習するだけ、高い基準を意識し続ければそれだけうまくなれるスポーツだなというのが本当に魅力で、うまくなれることを楽しみとして持てるスポーツです。

 

──最後に、後輩へのメッセージをお願いします

 今年、後輩たちも結構初期からたくさん悩んでいて、でもここまで良いチームになったのは本当に後輩たちのおかげだなというのは本当に強く思っています。みんななら、もっと難しい環境になるけどその中でもちゃんと乗り越えられる、絶対に大丈夫だと私自身信じていますし、みんなならきっと戦ってくれるだろうなと思っているので、本当に期待しかないなという気持ちです。

 

守護神としても主将としてもチームを引っ張る中村(撮影・高倉仁美)

 

橋口華奈選手(養・4年)のコメント

 (1部に昇格できたことが)シンプルに本当に嬉しいです。Celesteが今まで達成できなかった1部昇格という目標を私たちの代で達成できたことを本当に誇りに思います。

 

 2年前も1部との入れ替え戦で成蹊大学と戦ったんですけど、その時は2年生でどうしたら良いかわからないような状況だったので、その分また2年後に同じ舞台に立てたからには、今度こそは自分が(目標を)果たせるという気持ちで今回の入れ替え戦に臨みました。1部の相手と戦うということで、私たちには失うものが何もないので、仲間に背中をしっかり預けて戦うことができたと思います。

 

 途中暗くなってきたのでボールが見にくかったり、雨が降ってくることでパスがつながりにくくなったりするので、その点に関してはなるべくミスしないように注意してやりました。また、自分たちが流れを作るという気持ちもそうなんですけど、流れを相手チームに持っていかれないようにコンスタントに点を取りつつ、オフェンス時間を全体的に長くして、ポジションを重視するというのを結構意識していました。

 

──ラクロスという競技の魅力を教えてください

 ラクロスは地上最速の球技と言われているほど、ゲーム展開が本当に流動的なのもそうですし、ボールの動き自体が速いので、シュートとかが決まると結構魅力的に見える競技だと思っています。

 

──最後に、後輩へのメッセージをお願いします
 自分たちが目標にしてきた「1部昇格」をしっかり達成できたので、来年は1部の中で戦うことになると思うんですけど、全力で応援するので全力でぶつかってきてください!

 

今試合4点獲得しチームを勝利に導いた橋口(撮影・高倉仁美)

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