初の大学入学共通テストは一部都府県で緊急事態宣言発出中という異例の状況下での実施となった。新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の感染拡大が収まらない中、各大学の個別試験実施に関しては、先が見通せない状況が続く。入試に対する大学側の対応を整理するとともに、異例の入試に向き合う受験生や高校教員の声から、感染予防に向けて求められている対応を読み解く。
(取材・高橋祐貴=情報は19日午後6時現在)
2次試験中止は「かなり嫌」
現在、多くの受験生にとっての懸念事項は、私立大学の個別試験や国公立大学の2次試験が予定通りに実施されるかどうかだ。東大は19日時点ではCOVID―19流行を受けての2次試験実施の有無については何も発表しておらず、予定通り2次試験を実施する方向だ。東京大学新聞社は本部広報課を通じて中止の可能性の有無を質問したが「試験実施の実務業務により、取材依頼があっても回答困難な状況」のため回答を得られなかった。
首都圏の国公立大学の対応はさまざまだ。横浜国立大学は昨年7月に2次試験の中止を決めていた。電気通信大学は1月8日、政府の緊急事態宣言発出を受けて入試に関する声明を発表。2次試験は予定通り行うとしつつ、COVID―19の感染拡大で試験の実施が困難と判断した場合は共通テストの成績と調査書を総合して合否を判断する可能性もあると留意を促した。
東大志望の受験生からは2次試験実施を切望する声が上がる。京都府から東大を受験予定のAさんは「マーク試験では測り切れない部分が多くあると思う」ため2次試験中止は「正直かなり嫌」だと話す。北海道から東大を受験予定のBさんも共通テストのみでの選抜だと「2次重視の難関大では選抜が順当でなくなる可能性が高い」と懸念する。
高校の教員も、試験の実施形態を心配する。千葉県の私立高校の進路指導担当教諭は「個々の大学の2次入試が予定通りの内容で実施されるか」が目下最大の懸念事項だと話す。東大には変更点がある場合、速やかな告知を望むという。
大学と受験生が共に対策を
実際の試験会場では、どのような対応がなされるのか。文部科学省が各大学に向けて出したガイドラインでは、試験室の座席間隔の確保、マスク着用や入室時の手指消毒の義務付け、受験生に対する昼食持参と自席での食事要請などが求められている(表2)。
大学側の対策に対しては、受験生、高校教員の信頼もあつい。上京に不安がないか尋ねると、Aさんは「個人的にはそこまでコロナに不安を感じているわけではありません」、Bさんも「特段コロナは心配してないです。どこも変わりませんから」と話す。「大学側も相当厳重な対策をすると思いますので」とAさんが語る通り、大学への信頼が不安の払拭につながっている。北海道の公立高校で高校3年生を担当する渥美泰明教諭も「大学側はできる限りの対応をしてくれているため、特段求めることはない」という。
COVID-19流行下での入試では、高校側も例年とは違う対応を求められている。茨城県の公立高校では、例年共通テスト(昨年まではセンター試験)の日に試験会場で行っていた学年職員全員による受験生への激励を、今年は自粛することにしたという。文部科学省の要請でも「やむを得ない付き添い等を除き、試験会場やその周辺に参集すること」の自粛を求めており、要請に対応した形だ。
難しいのは受験生自身が行う感染対策だ。文部科学省が12月に受験生向けに出した注意事項では「食事の際は向かい合わず、会話は最低限にすること」なども求める。しかし渥美教諭は「実際食事をしていたらしゃべるし、それを通りかかった先生が『しゃべるのやめなさい』というのはどうなの、となる」と話す。教員側も注意は促すが、結局は生徒の自主性に任せるしかないという。
文部科学省のガイドラインでは、受験生に不安感や動揺を与えるのを避けるため、共通テストの受験生に自主検温を求める代わりに会場での検温は実施しないなど、対策を受験生に頼る部分も見られる。無事に試験を行うため、大学と受験生が共に感染対策に向き合うことが求められている。