東大は6月26、27日、昨年度入学者を対象とする「令和2年度東京大学入学者歓迎式典」を本郷キャンパスの東京大学大講堂(安田講堂)で開催した。同式典は対面の入学式が中止となった昨年度の学部・大学院入学生向けに実施されたもの。参加は事前登録制で、登録の結果学部生向け6回、大学院生向け2回の計8回が2日間にわたって開催された。
報道関係者向けに公開された26日の学部生向け式典第二部で、藤井輝夫総長は式辞を述べ「勉学や研究や大学生活のうえでも多くの困難を経験してきたみなさんに直接お会いして、その労をねぎらうとともに、東京大学の仲間として改めて歓迎の気持ちを表したい」ためと式典開催の意図を説明。5月10日に公表された五月祭の予定日程での開催取りやめについて謝罪の意を表明した一方で、藤井総長が就任前から強調していた学内外の対話について「公衆衛生に関わる緊急の決断プロセスにおいては、その緊急性ゆえに『対話』を難しくする要素をはらむことがあります」とした。昨年度からの新型コロナウイルス感染症流行による学生の活動制限については「いたらないところもあったと思います」と述べた上で謝意を伝えるにとどめた。
総代宣誓を述べたのは文Iの小林一也さんと公共政策学教育部の尾崎雄太さん。小林さんは新型コロナウイルス感染症流行下で過ごしてきた入学以来の大学生活を振り返った上で「未来像を明晰に描くことが困難な不確実性の時代において、我々にはこの社会の抱える諸問題に立ち向かう力を身に付けることが求められています」とした。
参加した学生の話によると、26日午後に実施された学部生向けの第三部では、式辞で対話の重要性を説く藤井総長に対し、新型コロナウイルス感染症流行下の学生生活を過ごす前期教養課程の学生との対話などを求める学生が声を上げる場面があった。学生は会場に垂れ幕を掲げて藤井総長に対話を呼び掛けたものの、職員らに動きを押さえられ、会場外に出されたという。参加した学生は「藤井総長の式辞は学生の呼び掛け後もそのまま続けられ、壇上の役員たちも終始無反応だった」と話した。
同式典は当初連休中の4月29日、5月1日に予定されていたが、開催前日の28日に延期を発表。5月31日に改めて開催日程が公表された。学生は事前の検査で問題がなかった場合のみ出席することができ、当日は式典の前後に学生同士で集まったり、飲食を共にしたりすることを控えることなどが要請された。また学部生・大学院生向けそれぞれの式典の様子は1回ずつウェブで同時配信された。