東大の2023年度学部入学式が4月12日午前、日本武道館(千代田区)で挙行され、約3100人の新入生が参加した。コロナ禍前の2019年度以来4年ぶりに家族などの入場が許可され、オンラインの同時配信も行われた。同日午後に、大学院の入学式も行われた。
藤井輝夫総長は学部入学式で、予測可能性の低い世界の現状に触れ「世界の公共性に奉仕する大学」の理念に向けて東大が行ってきた取り組みを紹介。21年に定めた東大の基本方針「UTokyo Compass」に関連して構成員の属性の多様性を高めることを挙げつつ個人が多様な視点や経験を持つことの重要性にも言及した。従来から述べている「学びと社会を結び直す」という理念につなげつつ教室内での学びにとどまらない社会の現場での実践経験の重要性も述べ、ChatGPTなど人工知能(AI)の台頭を念頭に「創造性を育む基盤として経験学習が重要である」という米ノースイースタン大学のジョセフ・E・アウン学長の言葉も紹介した。
本年度から就任した真船文隆大学院総合文化研究科長・教養学部長は、コロナ禍を経て社会活動が再開するまでの社会の変化を踏まえてメッセージを送った。やむを得ず始まったオンライン授業やリモートワークの効果が理解されて定着する部分もある現状を踏まえ、だからこそ対面のコミュニケーションも重視するよう発言。オンラインでは効率的な情報伝達が可能だが、オンラインでは切り捨てられてしまう些細な情報の重要性を訴えた。自身の学生時代の反省も踏まえ、社会活動が再開される中で行動範囲を広げ幅広い経験を積むことも強調。授業教室だけでなく図書館や21KOMCEEなど多様な施設を有効活用し、自らの行動範囲を広げるよう呼び掛けた。
来賓としてグローバルファンド保健システム及びパンデミック対策部長の馬渕俊介氏が登壇。夢を突き詰め経験を総動員して知恵を絞る大切さを伝え、世界や日本の大きな問題に立ち向かってほしいと新入生に想いをぶつけた。
この他、東大校友会会長、宗岡正二氏が祝辞を述べた。入学生総代は理Ⅱの川上大和(かわかみ・やまと)さんが務めた。
本年度の学部新入生は文Ⅰ427人、文Ⅱ376人、文Ⅲ497人、理Ⅰ1163人、理Ⅱ562人、理Ⅲ101人で計3126人。このうち女性は705人で22.6%。本年度の学部入試合格者のうち女性の割合は22.7%で、過去最高を更新していた。なお、外国人留学生は42人だった。
東大は例年、創立記念日に当たる4月12日に日本武道館で学部、大学院の入学式を実施している。20年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実施が取りやめられたが、21年度と昨年度は対面開催されていた。本年度は19年度以来となる家族らも来場できる形での開催となった。
式辞、祝辞の全文はいずれも東大の公式サイトで閲覧できます。
【関連記事】