約3100人の新入生が出席した2021年度学部入学式が4月12日午前、日本武道館(千代田区)で挙行された。昨年度は新型コロナウイルス感染症流行に伴い対面実施が中止になっており、本年度は参加者を新入生に限定して2年ぶりに実施。式辞を述べることが予定されていた藤井輝夫総長は5日に新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けたことから欠席し、相原博昭理事・副学長(経営企画、財務、社会連携・産学官協創担当)が新入生に向けたお祝いのメッセージを述べた。午後には大学院入学式が挙行された。なお、藤井総長は16日に公務に復帰し、東大のウェブサイトにメッセージを掲載している。
藤井総長の式辞に代わってお祝いのメッセージを述べた相原理事・副学長は、大学運営の方向性として対話を最も重視するという藤井総長の考えなどを紹介。対話が重要とされる対面の活動を段階的に拡大するという東大の方針を示しつつ、オンラインであっても心を通わせる対話は十分に可能であると述べた。
本年度から就任した森山工総合文化研究科・教養学部長は、存在が意味を持つために事物は多様でなければならないとするローマ帝国時代の教父アウグスティヌスの思想を引用。「『人間性』という『同質性』を認める一方で、それにもかかわらず、諸個人は『多様である』ということを認めることが必要になるのです」と述べた。加えて多様性や同質性を考える際、何についての多様性や同質性なのかを考えなければならないと主張した。
祝辞を述べたのは建築家の妹島和世氏と東大の同窓会組織である東京大学校友会の宗岡正二会長。妹島氏は自身のこれまでの経歴や活動を振り返りつつ、自身とは分野の異なる専門家とのコミュニケーションを深めることの重要性などを伝えた。宗岡氏は将来国際的なリーダーになるに当たり、身分の高い者はそれに応じて果たさなければならない社会的責任と義務があるという「ノブレス・オブリージュ」の精神を心に刻んでほしいとメッセージを送った。
本年度の学部新入生は文Ⅰ425人、文Ⅱ374人、文Ⅲ501人、理Ⅰ1167人、理Ⅱ562人、理Ⅲ101人で計3130人。このうち女性は664人で21.2%。本年度の学部入試合格者のうち女性の割合は21.1%で、過去最高を更新していた。なお、留学生は37人だった。
東大は例年、創立記念日に当たる4月12日に日本武道館で学部、大学院の入学式を実施している。20年度は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に伴う改修工事の影響で両国国技館での開催を予定していたが、20年3月10日に国技館での実施取りやめを発表していた。本年度の入学式については今年3月10日、五神真前総長と藤井総長(当時は理事・副学長)の連名で指針を発表し、感染状況を注視しつつ、参加者を新入生に限定して開催するとしていた。入学式の会場となった日本武道館周辺には、式に参加する新入生の他、対面での入学式を経験していない学部2年生の姿も見られた。