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2020年2月12日

新聞制作でアクティブラーニングを実践 第4回英字新聞甲子園開催

 2019年11月10日、國學院大學久我山中学高等学校で、高校生が自作の英字新聞の完成度を競う「英字新聞甲子園」が開催された。これは一般社団法人グローバル教育情報センター(GEIC)が主催するコンテストで、今年で4回目。動画発表のみの学校も含め11校14チームが出場し、新聞製作過程で苦労した点や工夫した点などをプレゼンテーションした。優勝はお茶の水女子大学附属高等学校の梅組だった。大会に同席した記者がその様子を伝える。

(取材・友清雄太 撮影・中村潤)

 

 

 各校発表に先立ち「英字新聞制作プロジェクトを振り返って」と題し、高校時代に英字新聞制作プロジェクトに参加した経験を持つ竹内津紘さん(一橋大学・1年)と江連千佳さん(津田塾大学・1年)の基調講演が行われた。英字新聞甲子園は、英字新聞制作プロジェクトの成果を競うものだ。竹内さんは英字新聞制作を通じて得たこととして「英語で吸収・発信すること」と「一つの物事に対して様々なアプローチをとること」の2点を挙げ、これらは大学や社会で役立つ能力であることを強調した。講演冒頭のスピーチで流暢な英語を披露した江連さんは英語を学び始めた当初はテストで思うような点数を取れず苦手意識が強かったが、次第に英語を音読することに引かれ、努力の末にクラスの英語スピーチの代表になった過去を明かした。その上で、一つの軸がダメでも他の軸を見つけて物事を極めることの大切さを強調した。

 

基調講演をする英字新聞甲子園OGの江連千佳さん

 

 その後、各校が途中経過報告として提出した原稿をチェックした臼倉綾乃講師(上智大学言語教育研究センター)が以下のように所感を述べた。①問題の現状と深刻性が伝わる分かりやすい構成②読者に有益な情報を提供していること③インタビューに同席しているような親近感④Think globally, Act locally⑤自分の学校の独自性を発信していること──という学生の視点から新聞を制作する上で五つの工夫が各校に見られたとし、各工夫に該当する記事を具体的に紹介し評価した。また、今後に向けた提案として、①誰に向けて書いた記事か②記事を通じて本当に伝えたいメッセージは何か③なぜ自分はその記事を書くのか──の3点を意識することを挙げた。

 

 いよいよ各校発表へ。お茶の水女子大学附属高等学校は菊組と梅組の2チームが来場し、どちらのチームも高校2年時に取り組んだ探究活動の成果を記事にまとめた。組織運営の面で工夫を見せたのは菊組。英語が得意な生徒が多いことを活かし、各チームに配置することでクラスの仕事効率を向上させた。また、限られた紙面の中に、クラスメイトが伝えたいことを最大限に載せる努力もしたという。一方、梅組は紙面の工夫が光った。全ての記事を導入→課題の明確化→解決策の提示という構成にしたことで紙面全体に統一感を演出。また、一目で見て読みたいと思えるような見出しや文章、写真のレイアウト、キャプションなど細部にもこだわる紙面作りを見せた。

 

 グローバル教育、国際交流が盛んな江戸川学園取手高等学校は、海外に行った際に現地の人との距離を縮めるため、学校や地元茨城の魅力を紹介する新聞を制作した。前年の10月から制作活動を開始したこともあり、情報が古くなった記事は差し替えるなど新聞の新鮮さを保つことに腐心した。また、英語の記事を執筆する上で、1人称・2人称を使わない新聞独自の表記ルールや事実に基づいた客観的に分かりやすい記事にすること、ニュアンスを考慮した英単語選びなどにも苦労したという。英字新聞制作を通じて、英語の楽しさに気づき、自分の言葉で海外の人と交流したいと思い立ち、実際にオーストラリアに短期留学した生徒もいたという。

 

 國學院大學久我山中学高等学校は、①久我山生であること②あらゆることに疑問を持つこと③世界の小市民であること──の三つの視点を重視したとし学校や地域の紹介や課題提示をテーマとした新聞を制作した。睡眠不足やバイトの是非など高校生に身近な話題や京王井の頭線沿線の自然に着眼し、都会で自然を維持するための取り組みを取材した記事などが見られた。また、1面は当初サッカー部の紹介記事の予定であったが、野球部の甲子園初勝利の記事に急きょ差し替えるなど速報性、話題性に配慮した記事作りが見られた。発表の最後に「3カ月という短い制作期間だったが、三つの視点を大事にしつつ、世界のどんな人が読んでも面白いと思える新聞ができた」と述べ自信をのぞかせた。

 

各校が自分たちの作品をアピールする

 

 いよいよ受賞校の発表。地域振興賞は江戸川学園取手高等学校に贈られた。審査員で結果発表を行った板津木綿子准教授(総合文化研究科)は、学校で取り組んでいるフードドライブ活動を取り上げた記事を特に評価した。食品廃棄問題に目を向け、住民が寄付した食品を子供の援助をする福祉団体に配分する取り組みであるフードドライブを、茨城県におけるSDGsの文脈で語ることで、地域の継続的な振興の姿勢を示し、他地域での汎用性も示唆している点が受賞の主な理由だ。外国メディア賞は國學院大學久我山中学高等学校だった。京王井の頭線沿線の自然保護の取り組みの記事が高く評価された。

 

 そして優勝校の発表へ。各審査員が順位を出し、それを集計する形で総合順位が決められた。結果、準優勝は國學院大學久我山中学高等学校、優勝はお茶の水女子大学附属高等学校梅組となった。両紙とも見出しの秀逸性や1面のインパクトで印象に残る紙面であったことは共通して評価された。また、お茶の水女子大学附属高等学校梅組は国際的なSDGsの問題と身近な学校の問題の二つのトピックの配置バランスが優れていたことが評価のポイントとして挙げられた。

 

優勝を果たしたお茶の水女子大学附属高等学校の生徒たち

 

 吉田研作特別招聘教授(上智大学・GEIC代表理事)は全体講評の中で、新聞制作は「アクティブラーニング」の典型だとし、チームで議論しながら一つの考えを作る経験や他者を考慮したコミュニケーションの重要性を説き「新聞を作る過程で様々な経験を積んで、今まで見えなかった新たな世界が見えたり、自分の幅が広がってくれたりしたならこの大会の意義は大いにあります」と述べ「これからもぜひ頑張っていい新聞を作ってください」と大会を締めくくった。

 

 大会終了後、櫻井淳二GEIC専務理事に英字新聞甲子園の今後の展望について聞いた。今大会までは英字新聞制作プロジェクトというGEICが提供するサービスを利用している学校の中で英字新聞甲子園という形で新聞の出来を競っていたが、来年からはその制約をなくし、全国から募集をかけることを構想中だという。今までは参加校が首都圏に集中していたが、全国の高校生が集まり交流することで視野を広げる機会にして欲しいと語る。また、今年で4回目を迎える本大会だが年々クオリティーが上昇しており手応えを感じているという。先輩からのノウハウの継承やチームマネジメントの質が向上していることを主な理由に挙げた。

 

参加者のコメント

 

◇日本大学高等学校の生徒

英字新聞という形で日本の問題を取り上げられたのはいい経験になりました。普段の学校とは違う学びの仕方が出来て良かったです。

 

◇地域振興賞を受賞した江戸川学園取手高等学校の生徒

保護者や地域の方との助け合いが実った記事が持続可能な取り組みとして評価されたことはうれしかったです。

 

◇外国メディア賞・準優勝となった國學院大學久我山中学高等学校の生徒

去年は地域振興賞と外国メディア賞を貰っていて今年は上位入賞を狙っていただけに準優勝という結果は素直に嬉しいです。井の頭線の記事はいい写真を撮るために何時間も粘ってました。有志で取り組んでいたので夏休みに人を呼び出すのに苦労しました(笑)。

 

◇優勝としたお茶の水女子大学附属高等学校梅組の生徒

素直に嬉しいです。編集部でこだわった見出しを評価されたのは良かったです。編集部が役割や仕事の流れを明確にしてくれたおかげでクラスの人がとても働きやすかったです。

 

【記事修正】2020年2月12日 11時45分 見出しの誤字を訂正しました。

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