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2018年12月5日

理事が明かす英語民間試験を巡る決定の舞台裏 検討の契機は相次いだ出題ミス

 大学入学共通テストでの英語民間試験の利用を巡り、対応が注目された東大。9月の決定に至るまでの経緯を、入試担当理事として一連の議論に携わった福田裕穂理事・副学長の話から振り返る。

(取材・一柳里樹)

 

出題ミス問題が検討の契機

 

 東大が民間試験の活用について独自の検討を開始する契機は、今年1、2月に発覚した大阪大学・京都大学の出題ミス問題に対する世論の批判だった。わずか1、2点の差にも厳しい世間の目が注がれていることを再認識し「民間試験で間違いが起きる可能性を見過ごしていては社会の了承を得られないかもしれない」と危機感を抱く。「この事件がなければ、東大として独自に民間試験の利用を検討することはなかったかもしれない。そのくらい大きな出来事だった」

 

 3月に国立大学協会(国大協)が公表したガイドライン(表1)の作成過程で東大は、国立大学一般入試の全受験生に民間試験を課す「基本方針」に「原則として」の1語を入れ、各大学が柔軟に運用できる余地を残すよう求める。これは国大協に受け入れられなかったものの、結果的に民間試験の結果を「各大学・学部等の方針に基づき」活用するとの一節が盛り込まれることになった。

 

 

 併せて五神真総長の指示で、東大内でもゼロから民間試験の問題点の洗い出しが始まった。4月には、ワーキング・グループ(WG)の設置を決定。7月、WGは民間試験の問題点を多く指摘する答申を発表した。

 

 答申発表後、議論の舞台は入試監理委員会に移る。入試監理委員会ではWGの答申を踏まえつつ、手段としての民間試験活用の観点からではなく、高大接続の観点から英語教育や入試はどのように在るべきか議論。「1点の重みをとても真剣に考える」入試の中で、複数の民間試験の結果を一つの基準で点数化し、2次試験の得点に組み込むことは極めて難しいものの、一定の条件が満たされれば、出願資格としての利用なら公平性は保てると判断した。

 

「1年目、トラブルは必至」

 

 民間試験を利用するための第1の条件は、採点ミスなどがあった時の対応を民間試験の業者任せにしないことだ。法的には、責任を取るのはあくまでも業者。しかし「例えば、民間試験の採点結果のミスが4月以降に発覚したらどのように受験生を保護すれば良いのか。業者の採点結果を信用した大学が全責任を負うのはおかしいし、大学ごとに対応が変わっても問題。大学入試センターと文部科学省が、責任を持って対応すべきだ」。五神総長が林芳正文科相(当時)直々に要望書を提出し、実現した林・五神会談で林文科相は、センターと文科省への責任の所在を省令などで明確化することを確約した。

 

 さらに第2の条件として五神総長は、大学・高校教員や民間試験業者ら関係者が一堂に会し、機械トラブルが起きた時の対応策や会場確保の方策などの問題解決を図る合議体の設置も要請。これにも林文科相が応じたことで「大学として責任を持って民間試験を利用できそうだ」との結論に傾いた。

 

 「導入1年目は、トラブルが起こるに違いない」。しかし、一度のトラブルで民間試験を否定するのは間違いだという。「重要なのは、あらかじめトラブルを想定して対策を立てること。センター試験のリスニングと同様、徐々にトラブルは減っていくだろう」

 

 

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この記事は、2018年11月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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