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2022年12月7日

【連載】東大の電力事情① 迫る冬の電力不足 東大の現状は

 厳しい電力供給状況が続く。東京電力管内では3月に「電力需給ひっ迫警報」、6月に「電力需給ひっ迫注意報」が発令された。電力価格高騰や電力需給のひっ迫は大学研究にどのような影響を及ぼすだろうか。本企画では東大における電力不足の現状を調査するとともに、冬場の電力危機に向けて東大ができることについて考える。第1回では東大の研究室、スーパーコンピューター、および外部の実験施設における電力調達の現状を調査した。(取材・上田朔)

 

 

 電力価格高騰の各研究室への影響について、東大教員に話を聞いた。そもそも研究室単位での電気料金の課金が行われていない研究科があるものの「研究科としては電気代が予算を圧迫している」とA教員(総合文化研究科)は話す。B教員(薬学系研究科)の運営する研究室では昨年度の電気料金が330万円に上り、例年より20万円程度増えた。冷蔵・冷凍機器が特に電力を消費するという。コンピューターを使ったシミュレーションの研究をしているC教員(工学系研究科)は節電対策として、コンピューターを購入する際には消費電力当たりのパフォーマンスや、コンピューターが正常に動作できる温度範囲を重要な指標にしている。D教員(情報理工学系研究科)は、研究用のコンピューターの使用状況に合わせて稼働を自動でオフにしているという。

 

各研究室で行われている節電対策の例(東京大学新聞社の取材を基に作成)

 東大情報基盤センターのスーパーコンピューターも消費電力も大きい設備の一つだ。2020年度には当時情報基盤センターが運用していたスーパーコンピューターシステム「Oakforest-PACS」「Oakbridge-CX」の電気料金は合わせて4.6億円に上った。

 

2021年5月より運用を開始した東大のスーパーコンピューター「Wisteria/BDEC-01」。2021年度の同システムの電気料金は2.6億円(写真は東大情報基盤センター提供)

 6月27日に向け経済産業省が「電力需給ひっ迫注意報」を発令したことを受け、東大情報基盤センターは運用しているスーパーコンピューターシステムのうち「Oakbridge-CX」「Wisteria/BDEC-01 Odyssey」の稼働を抑制した。情報基盤センターは、今回の運用抑制は「(電力ひっ迫時における)ジョブ受付抑止、一部ノード停止、復帰、という手順がスムーズに実行できるかどうかの確認」を目的としたものだと回答。2022年冬(3月22日)における電力ひっ迫時にも運用抑制を行ったが、復帰時にうまくいかなかった点があったため手順を改善していたという。結果的に6月27日の電力ひっ迫状況は深刻なものではなく、その後は「注意報」の場合には運用抑制を実施しないことに決めたという。現在は夏の状況をレビューした上で冬場の電力に向けた対策を検討している。

 

 東大を含む多くの研究者が利用する大学外部の実験施設も電力価格高騰の影響を受けている。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設「フォトンファクトリー」がその一つだ。フォトンファクトリーでは電子加速器から発生する放射光を使って物質科学・生命科学・地球科学などさまざまな分野の実験が行われている。力価格高騰に伴う資金不足により 22 年度第三期(1~3月)の稼働が厳しくなる見込みだと6月に発表した。東京大学新聞社の取材に対し、施設長の船守展正教授は10 月 17 日現在でも「第三期の運転の目途は立っていない」と回答。放射光を利用して物質中の電子の状態を調べる実験をしている大学院生Aさん(工学系研究科・修士1年)は「年内に実験が終わるように頑張っているが、年末に追加実験したくなった場合にフォトンファクトリーが稼働していないと困る」と話した。

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