美術、演劇、ダンスといった既成の芸術ジャンルを超え、あらゆる表現の形態を横断するマルチメディアアート集団として知られるダムタイプ。国内外で注目を集めるこのグループが、1994年に初演を行った『S/N』という作品は、エイズやセクシャリティ、ジェンダーというテーマを社会に投げかけ、そのメッセージと芸術性の高さから、様々なジャンルのアーティストに強い影響を与えている。
7月21日(月)に本郷キャンパス福武ラーニングシアターにて、ダムタイプ『S/N』の上映会が行われた。上映後には、出演者であるブブ・ド・ラ・マドレーヌさんと、批評家・演出家の大岡淳さんとが対談形式でトークショーを行った。
上映会には約200名の観客がつめかけた。トークショーでは、『S/N』のテーマであるマイノリティについての問題が、初演当時と現在とでどう異なってきたかなどが話し合われた。
ブブさんは、『S/N』はエイズやセクシャリティ、ジェンダー、障がい、エスニシティなどをテーマにしているが、「単にマイノリティを描いたものではなく、マイノリティとしてわかりやすく具現化された人々を通して、人が生きることや死ぬことについて描いている」と語った。
トークショーのなかでブブさんは、現代の社会においては誰もがマイノリティ性を帯びていることについて触れ、今まで日本社会でマジョリティと考えられていた「日本人」「ヘテロセクシャル」「健常者」「高学歴」「高収入」の「男性」こそが、最後まで解放されずに残された人々であると語った。
(文責 須田英太郎)