東大は6月23日、「東京大学 ダイバー シティ&インクルージョン宣言」を発表した。多様性の尊重として全ての構成員に対しそれぞれが持つ背景による差別がないことを保証すると共に、包摂性の推進として構成員に東大のあらゆる活動で不当に排除されることない参画機会を保障し、東大の全ての活動への多様な視点の反映を掲げている。宣言の策定は、藤井輝夫総長の下での行動指針「UTokyo Compass」で示された「ダイバーシティ&インクルージョン」についての具体的な行動計画の一つだった。
宣言は、東大の学術における卓越、知の革新、世界的人材の輩出のためには多様性と包摂性の推進が必要との認識に立ち、それらの課題解決の指針となることを目指している。前文に続いて「ダイバーシティ(多様性)の尊重」「インクルージョン(包摂性)の推進」の二つの項目が置かれた構成で、多様性と包摂性が均等な価値を持つことを示している。多様性については、近年の性に関する多様性、生活様式の多様性など「多様性」の概念自体の拡大を受け「性自認」や「性的指向」という文言を盛り込んだ。包摂性については「多様な構成員が、意思決定プロセスを含む東京大学のあらゆる活動において、さまざまな属性や背景を理由に不当に排除されることなく参画の機会を有することを保障します」とあり、大学全体として理念を言語化することで、活動の透明性と不当な排除のない平等な参画機会を目指している。
宣言は東大の構成員を対象としつつ、それ以外の東大の活動に関わる全ての人にも東大の姿勢を示している。宣言制定のプロセスにも宣言の趣旨が反映されるべきとの考えから、教員を中心に、全学への意見照会、総長と構成員の対話を経て制定された。
宣言は「東京大学憲章」(2003年制定) にある多様性尊重の理念を再確認し、新たな段階へ進めるためのものとして定められ た。これまでにも東大は「男女共同参画加 速のための宣言」(2009年)など多様性を重視する姿勢を示し続けている。今回の宣言と併せて発表された説明文書では、学生・教職員のジェンダー平等、多様な性自認・性的指向の尊重、構成員の多様な文化的背景への配慮、バリアフリー支援など課題が多く残っているという現状認識が示された。
東大は、多様性と包摂性という理念の浸透と実現のための活動として3月から8月にかけて「UTokyo D&Iキャンペーン2022」を実施している。キャンペーンでは、ジェンダーをはじめ多様性と包摂性に関する課題についてシンポジウムや公開講座などが行われる。
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