石田和久特任研究員、山田薫助教、岩坪威教授(共に東大大学院医学系研究科)らは2月25日、さまざまな認知症の原因となるタウタンパク質が脳内から除去される仕組みを発見したことを発表した。将来的には認知症の発症予防、治療法の開発につながることが期待される。研究成果は米学術誌『Journal of Experimental Medicine』に掲載された。
タウタンパク質は、脳内に異常に蓄積されることで神経細胞死を引き起こし、認知症発症の原因となる。今回の研究では、蛍光分子で標識したタウタンパク質を利用し、タウタンパク質が脳内で生じた老廃物と共に、グリアリンパ系という機構の働きにより脳外へ除去されること、水を通すタンパク質「アクアポリン4」がこの過程に貢献していることを明らかにした。さらに、アクアポリン4が欠損したマウスでは除去過程が抑制されてタウタンパク質が蓄積し、神経細胞死により脳が萎縮することを示した。タウタンパク質の除去の低下が認知症発症の主要な原因の一つであることが示唆される。
今後は、タウタンパク質を脳内から除去し、蓄積を防ぐことで、認知症の治療、発症の予防が可能となることが期待される。