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2025年4月17日

台湾最古の人類化石、デニソワ人と判明 謎に包まれたデニソワ人の分布に新たな知見

 海部陽介教授(総合研究博物館)、太田博樹教授(東大大学院理学系研究科)らを含む国際共同研究チームは、台湾で出土していた最古の人類化石が、これまで化石の断片しか見つかっていなかった旧人の「デニソワ人」男性に由来することを明らかにした。成果は4月11日付で米科学誌『Science』に掲載された。

 

 デニソワ人は、シベリアのデニソワ洞窟で発見された骨や歯の断片から抽出された古代ゲノムによって存在が知られていた旧人。これまでにシベリアとチベットの2カ所でしか化石が見つかっておらず、その姿や生息域は不明だった。一方、ゲノム情報から、デニソワ人と現生人類の祖先の間では交雑が起こっていたことが分かっており、アジア地域では数万年前に交雑が起こっていたほか、日本人のゲノムにもデニソワ人の交雑の痕跡が残っていることが知られていた。アジアで見つかった人類化石の一部はデニソワ人である可能性が指摘されていたが、詳細は分かっていなかった。

 

 本研究では、海部教授らが過去に報告していた台湾最古の人類化石「澎湖1号」の下顎骨に着目。過去の研究ではこの骨からDNAの抽出を試みていたが、おそらくDNAが分解されすぎていたため失敗していた。今回の研究では、化石に残る古代タンパク質を抽出することに成功。そのアミノ酸配列を解析したところ、一部にデニソワ人特有の変異が確認された。また、配列全体から推定された系統樹から、澎湖1号はデニソワ人と同じグループに分類されることが確かめられ、この化石がデニソワ人であることが示された。

 

 澎湖1号の歯の化石からは、男性特有のタンパク質であるY型アメロゲニンが検出され、遺伝的に男性であったことが分かったほか、澎湖1号の下顎骨の形状の特徴から、デニソワ人の顎は同時期の他の人類と比べて頑丈であったことが示唆された。

 

 今回の研究は、生息域に謎が多かったデニソワ人が、アジア南東部にまで分布していたことを明らかにした。共同研究者の蔦谷匠助教(総合研究大学院大学)は、古代タンパク質の高品質な解析結果が出た際、「『これは額に入れて飾りたいね…』と共同研究者たちと唸(うな)りました」とコメント。今回のように、古代タンパク質から化石の情報を解析する手法は、DNA抽出が困難な場合に重要になることが期待される。

 

論文情報

Takumi Tsutaya et al. ,A male Denisovan mandible from Pleistocene Taiwan.Science388,176-180(2025)

DOI:10.1126/science.ads3888

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