東京大学新聞社は、前期教養課程のSセメスター・S2タームの試験での新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合などの代替措置撤廃の経緯と再検討の有無について、教養学部に取材し、6月30日に回答を得た。6月13日に教養学部学生自治会は学部宛てに措置継続を求める要望書を提出しているが、教養学部は再検討を行っていないことを明かした。
学部は「新型コロナウイルス感染症の危険性に関する情報が少なく社会的な要請がある状況」が解消された背景があると説明。2020年度から行われていた代替措置は、当該状況下で周囲に感染させるリスクがある学生が対面試験を無理に受験することを防ぐ目的で行っていたが、同感染症の対処方法への社会的な認知の向上などの変化があったと指摘した。
代替措置が公平性を欠く状況を生じさせていたとも説明。代替措置適用の可否は診断書などの根拠書類に基づき審査を行う想定でいたが、感染拡大期は保健所機能のひっ迫で濃厚接触者の場合は根拠書類の提出が難しく、実質的に学生の申し出のみによる審査・決定となっており「審査の信頼性が担保できない状態」になっていたと明かした。代替措置に該当せず、やむを得ない事情で欠席した学生が通常受ける追試験では、点数の上限が75点になることとも併せて評価の公平性が損なわれると判断した。
学生自治会は要望書で「無理を押して学生が登校し感染が拡大するおそれがある」という点を指摘している。この点について学部は「感染症罹患等について自覚しているにもかかわらず無理を押して登校することは、本学学生としてあってはならないことです」とコメント。マスク着用、手指消毒、私語は行わないこと、定期試験用の着席方法から定期試験の実施は安全だという判断も併せて示した。
本年度S1タームまで実施されていた代替措置の実施有無の検討は、昨年度Aセメスター・A2タームの定期試験から今年5月にかけて、教務委員会や前期運営委員会、各関係部会、学部長室で検討を行ったという。東京大学新聞社は本年度S1タームでの当該制度の利用者数についても質問したが、公表していないとした。
【関連記事】