キャンパスライフ

2025年3月17日

第二外国語はどれを選ぶ?~ドイツ語・韓国朝鮮語・イタリア語編~

 

 合格を勝ち取った新入生の多くが最初に行う手続きの一つに、初修外国語の選択がある。少なくとも1年間は必修で学ぶ科目のため、慎重に選択する必要がある。英語の成績が優秀な新入生には、英語・日本語を含む3カ国語を使いこなす人材を育成する「トライリンガル・プログラム(TLP)」(2025年度からはプログラムの履修条件・修了要件などの変更が見込まれている)の受講資格が与えられる。どの外国語を選ぶにしても、その外国語が使用されている新たな世界に触れることになるだろう。授業を担当した経験を持つ教員と実際に履修した学生に、それぞれが持つ魅力や特徴を寄稿してもらった。(海外研修などのプログラムには変更の可能性があります)(構成・山本桃歌)

 

ドイツ語 ~先人たちと同じ言語を学び、近い過去を認識~

 

Wer fremde Sprachen nicht kennt, weiß nichts von seiner eigenen.

他の言語を知らない者は、自分自身の言語のことも分からない。(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)

 

 ドイツ語はドイツ、オーストリア、スイスなどの公用語であり、約1億人の母語話者がいます。英語、オランダ語ともに西ゲルマン語群の一つです。両言語で「石」を意味するstone、steenとドイツ語のsteinを並べると、似ているのがわかるでしょう。

 

 もとは親戚同士だった英語とドイツ語ですが、似ていない面もあります。発音を例にとるとstoneは[stoun]、steinは[ʃtan]でかなり違いますね。ただ、英語と比べてドイツ語はスペリングが規則的なので、ルールさえ覚えれば、初見でも発音がわかります。

 

 ドイツ語の特徴は語順です。通常、英語と同じSVOになりますが、副文では日本語に近いSOVとなります。でも、動詞の位置さえ気をつければ、語順は英語より自由だと言えるでしょう。名詞に三つの性と四つの格があるのは、学習者泣かせです。逆にいうと、独習は難しく、大学で学ぶのはよい機会かもしれません。

 

 英語が事実上の世界標準となった今、遠いヨーロッパの言語を学ぶ意味はどこにあるでしょうか。ドイツ語は近代科学の形成に大きな役割を果たしました。例えば、相対性理論はドイツ語で発表されています。20世紀前半まで最新の科学理論を知るにはドイツ語が必須だったのです。こうした近い過去を意識し、現在の状況を自明視しないためにも、先人達と同じ言語を学ぶことは役立つに違いありません。

 

 東大では、必修クラスで文法をしっかり学びますが、四技能をバランスよく習得するための授業も多数用意しています。また、インテンシヴの履修者にはドイツ研修の機会も用意しています。

(斉藤渉・総合文化研究科教授)

 

履修者の声

 

 歴史や哲学などドイツの豊かな文化に興味があり、ドイツ語の文献を読んでみたいと思い選択しました。ドイツ語と聞くと、暗記が多く大変そうというイメージをもつ方も多いでしょう。確かに名詞の性や動詞・形容詞・冠詞の活用など覚えることは多く努力を要します。しかし、発音は基本的につづり通りなので分かりやすく、文法も論理的なので、学習する中で一度法則を押さえればとても使いやすくなります。勉強しがいのある言語なので、興味のある方はぜひ検討してみてください。

(文Ⅲ・2年)

 

韓国朝鮮語 ~隣国を見つめ、世界に羽ばたく~

 

인생은 얼마만큼 오래 살았느냐가 문제가 아니다 .
얼마만큼 의미 있고 가치 있게 살았느냐가 문제다 .

人生は、いかに長く生きたかが問題なのではない。
いかに有意義で、価値ある生き方をしたのかが問題なのだ。
(金大中の2009年1月14日の日記、『人生は美しく、歴史は発展する』より)

 

 古来、日本と朝鮮半島との関係は深く、韓国朝鮮語学習の歴史も長いものがあります。それは、朝鮮半島との長い間の交流と葛藤の歴史のなかで韓国朝鮮語の知識が、隣国の政治や社会、文化などを知るための重要な手段であったからです。

 

 現在、日本と大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国との関係は交流ないしは葛藤の局面にあり、しかも、朝鮮半島情勢は世界規模の関心事となっています。また、朝鮮半島にルーツを持つ人々も、いまや世界に広がって存在しています。韓国朝鮮語の知識の重要性がますます認識されるところです。何と言っても日韓の間の人々の往来の規模は大きく、日本を始め、世界を席巻している韓国文化、K-POPブームも背景に、韓国朝鮮語に対する人々の関心は大きくなっています。

 

 韓国朝鮮語は、語彙(ごい)や文法面で日本語と似たところが多く、初めて学ぶ人でも1年間しっかり学べば、辞書を引きながら論説文の類ならある程度読めるようになります。最初は、日本語にはない子音や母音の発音に少し苦労させられるかもしれません。また、韓国朝鮮語を表す文字ハングルも初めて接する人にはとっつきにくいかもしれません。しかし、努力さえすれば十分身につけられます。

 

 駒場の韓国朝鮮語教育では、初級から上級にいたるまで文法、会話、講読、作文の授業が揃っており、より応用力をつけようという人向けにインテンシヴの授業も開設されています。韓国朝鮮語を集中的に学びたいという人には、高度インテンシヴ科目の履修やソウル大学での語学研修プログラムに参加するのもおすすめです。ぜひ韓国朝鮮語を学び、隣国と世界、そして日本を見つめなおすきっかけとしてみてください。

(三ツ井崇・総合文化研究科教授

 

履修者の声

 

 日本の隣にある韓国と北朝鮮という国についてより深く知りたいと思い、韓国朝鮮語を選択しました。文の構造や中国語由来の単語など、語族は違えど日本語と似ていて学びやすい面が多く、上達が早いのが楽しいです。教養学部にはレベルの高い語学の授業もあり、どんどん進んでも退屈することはありません。

 

 皆も同様に早く上達する中でいい成績を取ることは、他の言語と同じで簡単ではないですが、それでもやりがいのある楽しい言語ですし、クラスの雰囲気もよくとても充実した大学生活です。

(文・3年)

 

イタリア語 ~古典から変わらない美しい言語~

 

Considerate la vostra semenza:
fatti non foste a viver come bruti,
ma per seguir virtute e canoscenza.

諸君の生まれを考えてみよ。
獣のごとく生きるために君らは造られてはいない。
徳と知を追求するために造られたのだ。
(ダンテ・アリギエーリ『神曲』より)

 

 ローマ帝国の時代からヨーロッパ文化の中核を担ってきたイタリアでは、今日もさまざまな分野で世界が注目する「知」と「美」が生み出されています。そのため、言葉を知らないとアクセスできない情報を得ようとイタリア語を学ぶ人は多いのです。つづりが規則的で読みやすいこと、言葉の響きが美しいことも人気を後押ししているでしょう。さらに、風光明めいび媚かつ文化遺産の宝庫ともいえるイタリアは語学留学するにも楽しい場所です。

 

 駒場では、1年次に現代語の文法一通りを学習し、1年生の終わりには文章が読めるようになります。イタリア語は現代語と古い時代の言葉との隔たりが小さいので、駒場で1年頑張れば、ダンテやボッカッチョといった古典作家の文章もなんとか読解できるようになるでしょう。また、まだ日本に紹介されていない魅力的な文学作品が数多くありますが、それらを原語で読めるのもイタリア語を学ぶ楽しみのひとつです。

 

 TLPプログラムは準備中ですが、現在でもTLPに匹敵する授業を開講し、ネイティブの先生方の授業も豊富に用意されています。毎年恒例のペルージャ外国人大学での語学研修は、学年を問わずイタリア語の授業を受講するすべての人に開かれています。

 

 イタリア語を学習することは、2000年以上にわたって培われてきたイタリアの「徳」や「知」と出会うことを意味しています。この出会いは皆さんの視野を広げ、その後の人生の宝となることでしょう。駒場でイタリア語を学んでみませんか。

(山﨑彩・総合文化研究科准教授)

 

履修者の声

 

 英語とも日本語とも異なる品詞や時制の扱いにはとても苦労しました。イタリア語は英語と違って名詞に男性名詞、女性名詞があり、動詞には多数の活用パターンがあります。また時制については、英語には無いような「遠過去」などがあり、私も完全には理解できておらず、現在進行形で苦労しています。

 

 しかし学習を通して見えてくるイタリアの習慣や文化を先生が解説する時は、イタリアを近くで感じることができてやりがいを感じます。

(文Ⅱ・2年)

タグから記事を検索


東京大学新聞社からのお知らせ


recruit

   
           
                             
TOPに戻る