インタビュー

2014年12月12日

東大発のメディアベンチャー、ニュース解説メディアCredo

 今年3月に、オンラインサイトを立ち上げた東京大学新聞。紙とオンラインとでこれからのメディアのあり方を模索し始めた私たちと時を同じくして、ここ東京大学に、あるニュースサイトが立ちあがっていた。それがCredo (クレド)である。

発起人は、東京大学大学院学際情報学府2年の、前島恵(まえじまけい)さん。”『知りたい』にやさしく寄りそうメディア”をコンセプトに3月に立ち上がり、その後順調に成長を続け、8月にはGoogle newsに登録、10月には、PV増加率250%を達成している。11月26日付けで株式会社化し、今後は多方面の媒体と連携を予定している。

快進撃が続くなか、在学中に経営者となった前島さん。彼に、「ネットメディアの未来」と題して、インタビューを行った。

前島さん.JPG

分かりやすい専門知を

――会社化、おめでとうございます。

ありがとうございます。

 

――Credoを立ち上げた経緯と、問題意識について教えてください。

今年2月に、佐藤慶一さんという、ブログ「メディアの輪郭」で有名な、メディアに詳しい方と話している時に、アイディアが湧いてきて。Credoを立ち上げると決めたその日のうちにランディングページを立ち上げてメンバー募集を開始しました(笑)。

基本的には、二つの問題意識があります。一つ目は、今のメディアによるニュースは、分かりにくいということ。例えば今の新聞は、現代の若者の情報の取り方と合っていません。

新聞という媒体は、毎日読まれていることが前提なので、用語の説明がいちいちなされておらず、ある用語が分からない場合、お手上げです。だから僕は、そういった前提知識や前後の文脈を含めて解説してくれる”やさしいニュース解説”を展開したいと考えました。

二つ目は、大学院生の専門知を生かす場の不足です。学会も閉鎖的ですし、社会の側も、大学院生の知をもてあましています。せっかく修士課程を取っても、まったく関係ないところに就職している現状は、本当にもったいないことだと考えます。そういった「研究者の卵」の知見を活かせる場が必要だと思います。

 

――なるほど。今のような規模になるまでは、どのような経過をたどったのでしょうか。

最初の三カ月は、ひたすらに記事を蓄積しました。僕自身も、一日三記事は書いていました。

大きく動いたのが、Google Newsへ配信を開始した8月以降です。Credoの記事の更新がGoogle News上で表示されるようになって、PV数が一気に伸びました。そのタイミングで第二次ライター募集もかけて、まだまだ数は足りていないのですが、今の主力ライターもそのタイミングで大方揃いました。

 

――Google Newsに目をつけたのですね。

最近では、SmartNewsやGunosyなどのアグリゲーションアプリや、BLOGOSやHuffingtonpostなどのブログプラットフォームが流行っていますが、そういった媒体に取り上げてもらうためには知名度もPVも足りなかったので、まずは記事の質や更新頻度を基準に判断してくれるGoogle Newsとの連携を狙いました。

 

健全なジャーナリズムのための健全な経営

僕は、良質なコンテンツを作れる人がCredoに執筆して、その原稿料で食べていけるくらいまでの大規模なプラットフォームにしたい。そのために収益性を絶対に確保したい。ただ、広告主だけに収益を依存してしまうと、読み手のことを考えなくなると思うので、課金型で読者からいただけるようになるのが理想です。僕は”健全なジャーナリズムは健全な経営に宿る”と信じています。そのために最善を尽くします。

前島さんと編集長.JPG

ネットメディアの現状について話し込む前島さん(左)と、東京大学新聞オンライン編集長の須田(右)

 

――なるほど。具体的にはどのようにして収益性を確保する計画なのですか?

課金に関していえば弁護士ドットコムというサイトが一つのメルクマールだと思っています。ライターとして弁護士が在籍していて、読者の質問に答えるという、専門家によるQ&Aサービスです。Credoも、東大の医学部系の学生が複数所属しており、たとえば医療系に力を入れていくというのも、一つの方向性としてありえると考えています。

他にも、クラウドファウンディング型の記事を考えています。現状のウェブメディアって、書いた後から広告が入ってくる、いわば後から収入が決まるんですね。それを逆転して、最初にもらえないだろうかと。ライターによる「こういう記事を書きたい」という企画書がサイト上に並んでいる。それを見て「読みたい」と思ったものに投資してもらって、それから書き始める、という。

いずれにしても、目標としているユニークユーザー数に到達してから始めることになるでしょう。「わかりやすいニュースと専門知の活用」という軸はぶらさずにサービスのあり方は柔軟に変えていくことになると思います。

 

――面白すぎますね、それ…。

我々は、機動力が一つの強みなので、思考錯誤しながら頑張ります。日本のWebメディアにおけるマネタイズ手法はまだまだ発展途上で、勝者が決まっていない状況なので、チャンスはあると思っています。

繰り返しになりますが、日本のニュースをもっと面白く、専門家や専門家の卵の方たちの知をもっと世の中に還元していきたいと考えています。

 

――最後に、読者にメッセージを

Credo、絶対に伸ばします。ライター等、参加に興味がある方は是非ご連絡ください!

 

(文責 沢津橋紀洋)

前島恵(まえじま けい)

自由の森学園高校、早稲田大学人間科学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士2年。メディア論専攻。2014年3月にニュース解説メディアCredoを立ち上げ、エンジニア兼編集長を務める。同11月に株式会社kairoを設立。

Credo-クレド-「知りたい」にやさしく寄りそうメディア

http://credo.asia/

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