学術ニュース

2021年1月17日

東大医科学研究所、ネコの新型コロナ後遺症長期化を発見

 河岡義裕教授(東大医科学研究所)らは、新型コロナウイルスに感染したネコで、無症状でも肺の炎症による長期的なダメージがあったと発表した。感染後回復したネコは、約4週間後に同ウイルスを接種しても感染しなかった。同ウイルスに感染した動物個体への長期的影響の理解に寄与する。成果は7日、米科学誌『エマージング・インフェクシャス・ディジーズ』(電子版)に掲載された。

 

 河岡教授らはネコに同ウイルスを感染させ、3、6、10日目に観察。感染性のあるウイルスが肺から検出されなかった個体でも、肺の炎症が観察された。炎症は、新型コロナウイルスの増殖自体ではなく、免疫反応を活性化させる体内物質「炎症性サイトカイン」などの間接的要因によって発生すると考えられる。

 

 無症状で回復したネコでは、慢性化した炎症像が感染から4週間残存した。肺の炎症が特に強いネコは、同ウイルスに感染した重症患者と同等のダメージを負った。飼いネコが同ウイルスで、知らぬ間に呼吸器に損傷を負う可能性がある。

 

 同ウイルスは、鼻や気管では6日目まで増殖したものの、肺では3日目に一部で検出されただけだった。鼻や気管での増殖は、ネコ個体間で効率良く同ウイルスが伝播するという、河岡教授らの先行研究を裏付ける。消化器や心臓、脳などの臓器からは、同ウイルスは分離されず、どのネコも発熱や体重減少、せきなどの呼吸器症状はなかった。

 

 感染後4週間が経過した回復済みのネコに同ウイルスを接種すると、鼻や気管などでウイルスが検出されなかった。一度感染した個体で免疫記憶が残り再感染しにくくなる「防御的免疫記憶」の成立を示唆する。

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