学術ニュース

2021年2月28日

新型コロナ流行期間中に女性と若年層の自殺率が増加 東大医学系研究科が分析

 坂元晴香特任研究員(東大医学系研究科)らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期間中、女性と若年層の自殺率が上昇したことを明らかにした。成果は2月2日、米科学誌『JAMAネットワーク・オープン』(電子版)に掲載された

 

 既存の研究では、COVID-19の流行初期の数カ月間、高所得国で自殺率の増加は見られていなかった。また、2010年1月から2020年9月までの日本の自殺率のデータを用いた既存の分析では、2020年7~9月の自殺率は女性で増加していた一方、男性では増加が見られていなかった。

 

 坂元特任研究員らは厚生労働省のデータを用いて、2011年1月から2020年11月までの日本での自殺者を分析した。まず、自殺率に影響し得る多様な要因を調整した上で、2016~2019年と2020年の自殺率を月ごとに比較(表1)。男性では10、11月に、女性では7〜11月に増加が見られた。職業別にみると、男性では会社員で8~10月に、学生で8、9、11月に増加していた。女性では会社員で7月と9~11月に、学生で8、9月に、主婦で8、10、11月に、無職で7~10月に増加が見られた。

 

(表1)2016~2020年の、性別・月別の自殺割合(坂元特任研究員らの発表資料より)

 

 続いて、2011~2019年の自殺率の傾向を踏まえて予想される2020年の自殺率と、2020年に実際に観測された自殺率との差を算出(表2)。その結果、男性では30歳未満の層で増加幅が最大となり、特に7~11月に著しい増加が見られた。女性では30歳未満と30~49歳の層で増加幅が最大だった。

 

(表2)年齢別に見た、2020年の予想自殺割合と実際に観察された自殺割合(坂元特任研究員らの発表資料より)

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