坂元晴香特任研究員(東大医学系研究科)らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期間中、女性と若年層の自殺率が上昇したことを明らかにした。成果は2月2日、米科学誌『JAMAネットワーク・オープン』(電子版)に掲載された。
既存の研究では、COVID-19の流行初期の数カ月間、高所得国で自殺率の増加は見られていなかった。また、2010年1月から2020年9月までの日本の自殺率のデータを用いた既存の分析では、2020年7~9月の自殺率は女性で増加していた一方、男性では増加が見られていなかった。
坂元特任研究員らは厚生労働省のデータを用いて、2011年1月から2020年11月までの日本での自殺者を分析した。まず、自殺率に影響し得る多様な要因を調整した上で、2016~2019年と2020年の自殺率を月ごとに比較(表1)。男性では10、11月に、女性では7〜11月に増加が見られた。職業別にみると、男性では会社員で8~10月に、学生で8、9、11月に増加していた。女性では会社員で7月と9~11月に、学生で8、9月に、主婦で8、10、11月に、無職で7~10月に増加が見られた。
続いて、2011~2019年の自殺率の傾向を踏まえて予想される2020年の自殺率と、2020年に実際に観測された自殺率との差を算出(表2)。その結果、男性では30歳未満の層で増加幅が最大となり、特に7~11月に著しい増加が見られた。女性では30歳未満と30~49歳の層で増加幅が最大だった。
【関連リンク】