東大医学部附属病院は6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者へのナファモスタットメシル酸塩(商品名フサン他)、ファビピラビル(商品名アビガン)併用療法の観察研究の結果を発表した。患者11例中10例で症状の軽快が見られ「併用の有効性を示唆する」としている。結果は3日付の医学誌『クリティカル・ケア』(電子版)に掲載された。
両剤は元々COVID-19の治療とは異なる用途で開発された国産既存薬。ナファモスタットはウイルスのヒト細胞への侵入を抑制し、COVID-19への有効性が期待される。ファビピラビルもウイルス増殖を抑えると考えられ、作用部位の異なる両剤の併用で相加的な効果が望める。加えて一部のCOVID-19患者では、血栓と症状の悪化の関係が指摘され、ナファモスタットの抗凝固作用も効果が期待されていた。
今回は4月にCOVID-19で医学部附属病院に入院し、集中治療室(ICU)での管理を要した重症患者11例を対象に、人道的使用により両剤を投与。8例で人工呼吸器、うち3例で人工心肺装置ECMOを必要としたが、人工呼吸器を使用しECMOを使用しなかった1例を除く10例で症状が軽快した。今回の成果はICU治療が必要な重症患者の30~50%が死亡したという海外の事例と比べ良好で、今後の臨床研究の必要性が示唆されるとした。
併用効果を観察する特定臨床研究は5月から開始され、現在も続いている。
この記事は2020年7月21日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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