本日は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う非常事態の中、私たち卒業生のためにこのように心温まる式典を催していただき、誠にありがとうございます。ご多忙の中、諸先生方ならびにご来賓の方々のご臨席を賜りましたことに、深く御礼申し上げます。また、ただいま五神総⻑より告辞のお言葉を賜りましたことに、重ねて感謝申し上げます。
振り返ると、一生ものの学びと出会いが得られた4年間の学生生活でした。前期教養課程では学問の世界の奥深さに触れることができました。後期課程では経済学部に進学し、複雑な社会現象に対する問題設定の仕方から論理的分析の方法、第三者への伝え方まで、知的営みの手続きをご指導賜りました。また、互いに刺激しあえるかけがえのない学部同期、友人たちにも恵まれました。しかし、ご存知の通り、私たちの大学生活のあり方はこの1年で大きく変容しました。不確実性の高い状況下で、手探りながらも迅速に学びの場を設けてくださった大学の方々への感謝は尽きませんが、同期と顔を合わせて議論する機会が少なくなったことは残念でなりません。各々の体験こそ異なれど、皆さんもこの1年を振り返ると、やり残したことがある、消化不良だという思いがあるというのも偽らざる感情ではないでしょうか。
しかし、大学卒業は終わりでも始まりでもありません。卒業後も成⻑していく機会は尽きることはなく、大学生活で培ってきたことを土台とした連続的なものであると思われます。だからこそ、学んできたことの意義を噛みしめつつ歩みを止めないことを決意いたします。
卒業以降も学び続けるという個人的な決意とは別に、私たち卒業生はこの恵まれた環境で学んできたことを社会に還元する責任を負っています。現在、社会には未解決の課題が山積しています。感染症の拡大という未曾有の危機のみならず、パンデミック以前から顕在化していた経済・社会問題にも取り組まなければなりません。その過程で知識自体は時代遅れとなるかもしれません。しかし、私たちは「まだ答えがない問い」への取り組み方を学んできました。卒業生一同、産学官あるいは分野の垣根を超えて、社会全体の幸福の実現に向けて尽力して参ります。
最後になりましたが、本日までご指導頂いた諸先生方、大学生活を支えてくださった職員の皆様、ともに学生生活を過ごした友人たち、そしてなにより、私たちの成⻑を温かく見守り支え続けてくれた家族に、改めて心より感謝申し上げます。また、皆様のご健康と東京大学の益々の発展を祈念して、答辞とさせて頂きます。
令和3年3月18日
卒業生総代 経済学部 佐藤大樹