本日は、私たち卒業生のためにこのような盛大な式典を催していただき、誠にありがとうございます。ご多忙の折ご臨席いただきました多くの皆様に、卒業生一同心よりお礼申し上げます。また、ただいま五神総長よりご告辞と激励のお言葉を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。
ただ「優しい人になるために」この大学の門を叩いた私は、どんな学問を学びたいのかもわからないまま、興味をもった講義を手あたり次第受講しました。受ける講義を選ぶこと、何も強制されていない時間がたくさんあること、突然与えられた自由に少なからず困惑し、それを飼いならせるようになる必要がありました。私にとって前期教養学部生としての2年間は、「1人の人間として自由に生きる」ということを練習する時間であったように思います。その後進学した、文学部の哲学専修課程はまさに、「私の考えたいことを考えつづけられる環境」でした。自らの考えたいことを考えつづけるためには、それがいくら困難であったとしても、自らの考えたことや感じたことを誠実に言葉にしようと努めること、言葉にできると信じること、ただし自らの言葉を過信しないことが必要であると知りました。
自らが何を考えていて、どうありたいのかを言葉にするという営みはいつも、私の話を一生懸命聴いてくださる人たちの支えがあって成り立っていました。私が考えたい、考えつづけたいと思ったことをそのまま尊重し、かつより綿密に言葉にすることを助けてくださった先生方に支えられ、私と同じように、自分がどうありたいのか、どうあるべきなのか一生懸命考え、またお互いに話し聴くことで刺激しあった友人たちに支えられました。初めて、心から尊敬し、この人には敵わないと思えるような人たちに出会うことができました。
今日私たちは東京大学を卒業し、それぞれが選択した道を歩き始めます。それがどのような道であったとしても、私たちがこの大学で過ごした日々とその意味は決して消えることはありません。大学生として自由な立場で過ごす時間すべてが、自分を知り、自分がどうありたいのかを考えつづける時間になりました。そしてここは、わからなくても考えつづけることを応援してくれる場所であり、いくら難しくても考えることをやめてはならないということを教えてくれる場所でした。
最後となりましたが、これまでの学生生活を支えてくださったすべての皆さま、いつも私の選択を尊重し支えつづけてくれた両親に心より感謝し、また東京大学のますますの発展を祈念して答辞とさせていただきます。
卒業生代表 文学部思想文化学科哲学専修課程 依田遥香(よだ・はるか)
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