文化

2019年12月12日

味わい深いひとときを コーヒーの楽しみ方

 授業やサークルに忙殺される東大生。気分転換にコーヒーをたしなむのはいかがだろうか。気軽にコーヒーを楽しむヒントを、珈琲同好会の大野康晴さん(養・3年)と珈琲同好会お薦めの駒場付近のカフェ2店に取材した。身近だがどこか距離のあるコーヒーの世界に一歩踏み出してみよう。

(取材・土屋佑太)

 

家で楽しめる豊かな風味

 

大野 康晴(おおの やすはる)さん(養・3年)

 

 家での楽しみ方。まずはコーヒーを入れてみよう。大野さんはペーパードリップという入れ方を紹介する。漏斗型の紙フィルターでひいた豆をろ過する、手軽でオーソドックスな方法だ。「入れ方次第で味も変わりますし、同じ入れ方でも器具を変えると味や抽出速度が変わって面白いです」

 

熱々のドリップコーヒーを注ぎ込む(写真は大野さん提供)

 

 コーヒー豆には浅いりと深いりがある。前者は酸味が強いが豆本来の味が出る。後者は苦いが香ばしい味が出る。大野さんが薦める入れ方も豆のいり方で変わる。浅いりの場合は豆18.5gにつきお湯260ml。サッとお湯を落とし、蒸らしの時間で豆をかき混ぜる。一方深いりは豆20gにつきお湯260ml。ゆっくり抽出するが、かき混ぜない。「フルーティーな風味など苦さを超えた豆の特性を楽しみたい人は入れ方にこだわると良いです」と大野さん。

 

 

 コーヒーをより楽しめるようアレンジレシピを大野さんに聞いた。

 

・ラムラテ 
 カフェラテを作った後に、ラム酒を小さじ1加えるカクテル。ラムもコーヒーも香りや風味があるが「これらがけんかせず調和するのでお薦めです」。

 

・カルダモンコーヒー
 味に変化を付けたい人にお薦め。香辛料のカルダモンの実を加えて沸かしたお湯でインスタントコーヒーを作る。チャイの飲み方に近い。「カルダモン独特の香りが強いですが、インスタントコーヒーが無個性なので、試す価値ありです」

 

 付け合わせの菓子にもポイントがある。浅いりは酸味を楽しむため、クッキーなどの甘みが強すぎない菓子。深いりは苦味が強いため、ケーキなどしっかり甘みのある菓子に合うという。

 

 このように、家でもコーヒーを十分楽しめる。家に帰ったらぜひ一杯いかがだろう。

 

About Life Coffee Brewers

 

価値観変える高品質

 

スペシャルティコーヒーを入れる田崎さん

 

 渋谷道玄坂を登り切ったビル街にたたずむ、清潔感ある白を基調とした外装と内装のコーヒースタンド。スペシャルティコーヒーを身近なものにすべく営業する。

 

 スペシャルティコーヒーとは上位数%未満の高品質で、持続的な農業を通じ、栽培や流通の透明性が確保されたコーヒーのこと。スタンドの形式なのも、そうしたコーヒーを気軽に立ち寄って購入してもらうためだ。「もっとコーヒーが日常になればと思います」とスタッフの田崎さん。

 

 コーヒーは社会問題とも結び付く。コーヒー栽培者が暮らすためには、毎年適正価格で一定量売れる相手が必要だ。しかし、熱帯での気候変動や環境破壊に伴い、おいしいコーヒー豆を生産できる場所は減ったため、この必要条件が崩れつつある。「このままではコーヒーが飲めなくなる」と危機感を抱き、生分解性の紙コップを使うなど、環境に配慮する。「こうした社会への目線を、コーヒーを通じて伝えられたらと思います」

 

 北欧でスペシャルティコーヒーに出会い、感化された経験を踏まえ「とりあえず、飲みに来てください。コーヒーの印象が変わります」と田崎さん。こだわりの器具や研究を重ねたレシピに裏打ちされた自信も垣間見える。取材後、記者もカフェラテを頂いた。浅いり特有の快い酸味のコーヒーを土台にしっかりと牛乳の甘さが口の中に広がる。ミルクティーのように飲みやすいが、土台のコーヒーの個性は決して消えない。ぜひコーヒーへの印象を変えに行ってはどうだろう。

 

Switch Coffee Tokyo

 

心地のよいバランス

 

 目黒の住宅街にある、小さなコーヒースタンド。焙煎の工場を併設している。「豆屋ですから、扱う6種の豆は厳選します」と自信をのぞかせるのは店主の大西さんだ。飲んで心地のよい、正当な価格のスペシャルティコーヒーを提供することを大切にしている。「はやり廃りとか、余計なことは考えない」。シンプルな内装と外装は説得力を持たせる。

 

 こだわる人のみがコーヒーを飲む時代は終わり、コーヒーは大衆の手に届いた。目利きや焙煎、抽出などの難しい工程はコーヒー店など業者側が担うように。だからこそ「コーヒーを始めるなら難しいことは考えないで」とメッセージを送る。作法を無視しても良い。「しょせんは飲み物」なのである。一方、まずいコーヒーとの出会いでコーヒーの趣味をやめるのはもったいない。そのため、評判の良い店に行くことも大西さんは勧める。

 

ハートのラテアートが目を引くカフェラテ

 

 10年前に飲んだカフェラテの文化や味に感銘を受け、コーヒーを仕事とした大西さん。「ブラック以外認められない理由や、コーヒーの味付けが否定される理由はない」という言葉には実感が伴っていた。記者も、カフェラテを頂いた。土台となるコーヒーは酸味も苦味も突出していないが、バランスの取れたおいしさだ。そこに牛乳が加わるが、牛乳の主張も穏やかなので、バランスが取れて、口当たりも良い。これが「心地よさ」なのかと感銘を受けた。ぜひ、このバランスを体感してほしい。


この記事は2019年11月19日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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