東大は外部の機関と連携して、水素の運搬に必要な有機化合物メチルシクロヘキサン(MCH)を、二酸化炭素を排出せず安価に製造する世界初の技術検証に成功した。二酸化炭素を排出しない水素を主要なエネルギー源とする「水素社会」実現につながることが期待される。この技術検証は東大の社会連携研究の一環として、2018年12月5日から今月14日にかけて実施された。
従来、水素の運搬には、水を電解して生じた水素を貯蔵し、有機化合物トルエンと反応させて液体のMCHとする方法が使われた。今回は、石油元売りのJXTGエネルギーなどが開発した特殊な電解槽で、水とトルエンを電解して直接MCHを製造する方法を用いて工程を簡略化した(図)。
豪クイーンズランド工科大学が開発した、自動で太陽を追尾し向きを変える高効率な太陽電池を用いて、JXTGエネルギーがオーストラリアでMCHを製造。資源関連の設備を手掛ける千代田化工建設が、日本に輸送されたMCHから水素を取り出した。
JXTGエネルギーの試算によると、今回の製法を用いれば、MCH製造に関わる設備費を将来的には半減させることが可能。太陽光発電を用いたことで、二酸化炭素を排出せずに0.2キロの水素を作ることにも成功した。