東大には「クラス」がある。しかしコロナ禍で、対面授業もキャンパス外での交流も減少した。現在、各クラスの交流の内容や頻度はどうなっているのか。アンケートから、交流の減少が引き起こす問題やクラスの持つ機能が見えてきた。(後編)(取材・金井貴広)
情報交換も「二極化」も生む今日の対面
東京大学新聞社は、現1年生のクラス内の交流について二つのアンケートを実施した。①1年生オリ長対象、各クラスでの交流の実情や頻度に関する調査と、②1年生全員対象、クラス内の交流についての個人的な受け止めや悩みに関する調査で、①は14人から、②は21クラスの107人から回答を得た(記事中の数値は小数第2位で四捨五入)。
教養学部は対面の機会を設ける授業をいくつか決めているが(表1の太字)、持病などの都合で教員がオンラインで授業するため(コールセンター方式)、制度上は学生が集まって受講する教室が割り当てられていても、実際は学生全員が対面で集まることはない場合がある。①のアンケートでも、これらの授業があると答えた8人のうち5人は「ある程度決まったメンバーが、当該週に集まって受講している」と回答し「8割以上の人」が集まっている状況ではないとした。文系のAセメスターの初修外国語では、大多数のクラスは隔週の対面授業が1〜2個、二つのクラスは毎週対面授業が2個ある一方で、隔週でコールセンター方式の授業が2個のクラスも三つある(表3)。対面授業も、希望すればオンライン受講で代えることもできる。このためクラス全員が定期的に集まる授業がないクラスもある。
クラス全員が集まる対面授業が定期的にあるクラスのオリ長からは「教え合いができる。進振りやバイト、サークルなどの情報交換がついでにできる」「普段話さないクラスメイトとの親睦を深められること。オンラインではなく直接のコミュニケーションを取ることにより、より仲を深められる」といった深い交流の様子が挙げられた。一方「オンライン参加している人に疎外感が出てしまう」「感染対策徹底のために自宅で受講している人が陰キャのように扱われる。クラスの二極化をもたらしている」といった、コロナ禍の対面授業が、クラス内での交流の量の差を生んでいる現状も指摘された。
授業以外の交流の機会について、アンケート①で聞いた結果は図1の通り。14人中10人でクラスZoomが行われたことがあると回答した。「日時の工夫や、LINEの匿名投票機能などの活用。気軽に誰でも他の人を誘える雰囲気作り」といった工夫もされて運営されているようだ。
「情報を共有できる、強制的な帰属先」
アンケート②で、クラスメートとの距離の取り方が入学前に思い描いていたものと比べてどうだったか聞くと、図2の結果が得られた。「とりにくい」「どちらかといえばとりにくい」と答えた人は「Slack(ビジネスコミュニケーションツール)やLINEでは身近な感じで交流できるが、対面で会った時にすぐに打ち解けることができない」時や「クラスの中でも関わることが多い人と少ない人がいて、関わりの少ない人と共同作業する」時にそう感じたという。クラスメートとの交流が少ないために、履修、サークル、アルバイトなど学生生活に関する情報収集に難しさを感じたことがあるか問うと、過半数が「ほとんどない」「全くない」と答えた(図3)。一方、「よくある」「たまにある」と答えた人のうち、どのような時に感じたかの回答は、35件中12件が履修に関するもの。「Twitterなどで情報収集せねばならぬ」「留学生なのでたまにわからないことがあっても、聞ける人がいない」という回答もあり、情報収集に困らない人も多い一方、履修など重要な情報を得るのにも苦労している人がいると分かった。
コロナによる授業の受け方や交流のあり方の変化で、交友関係の構築に難しさを感じる時があるかという質問では「ある」が49.5%、「どちらともいえない」が31.8%、「ない」が18.7%になった。この質問を、クラス全員と教員が対面で受ける授業数が0〜1か2以上かで分けて集計すると、前者の方が、割合で10.3%「ある」が少なかった(図4)。「ある」と答えた人は、「特定のクラスのメンバー以外と話すきっかけがない」「気が合う人がいたとしてもそもそも交流がないので友達になれない」などと指摘した。その他「学園祭のモチベーションが上がらない」「課題に関する疑問を学生間で共有することが難しい」ことが困るという声もあった。
コロナでクラスで受ける対面授業が減少したことなどにより、情報収集や友人関係の構築に難しさを感じる人がいることが分かった。複数人のオリ長も「情報を共有できる場を作れる点でクラスという強制的な帰属先を作っていることは大切」という趣旨の考えを持っている。