昨年度に創設されたばかりのサークル、東大社会起業コミュニティFor Earth。「自分たちが望む社会を、自分たちの手でつくる」を理念に掲げて活動している。
そもそも、社会起業とは一体何か。人によって定義はさまざまだが「お金を稼いで事業の拡大を目指すのが通常の起業なら、事業を通じて社会の課題の解決を目指すのが社会起業です」と設立者の谷口朋さん(薬・4年)は話す。貧困問題や地球温暖化など、経済的な利益を追い求めるだけでは太刀打ちできない問題に対する一つの解となり得るという。
普段はプロジェクトごとに2、3人のチームに分かれて活動し、月1回の定例ミーティングで進捗を全体に共有する。昨年度は二つのプロジェクトが発足し、ビジネスコンテストに挑戦した。一つ目の「子どもの貧困とフードロス」は、「子ども食堂」やフードバンク、学習支援など「子どもの貧困」解決を助ける活動について発信し、実際に活動に携わる人同士をつなぐことで、取り組みを活性化させようというもの。現在も、For Earthから独立したプロジェクトとして進行中だという。もう一つの「容器循環型社会」では、テイクアウト用の容器の多くが使い捨てであることに注目し、再利用できないかを考えた。新型コロナウイルス感染症の影響で最終的には実現は難しいと判断したが、食べ物と一緒に容器を消費せざるを得ない現状を是正しようとしたという。さらに、ゼミ形式の勉強会も実施。「そもそも社会課題とはなんなのか」や「現在の資本主義の問題とは」といった、より本質的な問題を考える機会になっている。
実際にミーティングをのぞかせてもらった。この日は、SDGsをテーマにした「クロス」というカードゲームを用いて親睦会が行われた。一方が成立するともう一方が成り立たない「トレードオフ事例」について、手元に配られた「アイテムカード」を使用して解決策を考える。「食糧危機の国に農業支援を行ったら、生産量の増加により商品単価が下がり、支援外農家の収入が下がった」という事例では「そもそも支援がその国の農家全体に行き渡っていないことが問題」など、鋭い意見が飛び出し、和やかな雰囲気の中でも活発な議論が行われた。
「活動の中で生まれてきたアイデアを机上の空論で終わらせたくない」と谷口さんは話す。いつかプロジェクトを実現することを目標に、活動は今後も続く。
(松崎文香)
【記事訂正】2021年6月21日16時38分 第三段落の一部表現を変更しました。