本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で学生生活のさまざまな場面に影響が出た。毎年春に盛んに行われるサークル新歓活動もその一つだ。大学から対面のサークル活動が禁止され、サークルオリエンテーション(サーオリ)が中止される中、東大の団体はどのような対応をしたのか。学術系などのサークルの説明会をZoomにて配信する「オンライン合同新歓」を企画したUT―BASEのメンバー、新歓で実演や体験が重要となる音楽系・運動系サークル、実際に本年度の新歓を経験した新入生に話を聞いた。
(取材・長廣美乃)
オンラインで魅力を伝える
社会貢献、ビジネス、学術などの「まじめサークル」をまとめて魅力を発信し、成長したい学生とのマッチングを助けるUT―BASE。メンバーも皆「まじめサークル」に所属し、各団体の新歓を巡る混乱は認識していた。「既にサイトに掲載中の団体とつながりがあったため、実現性が高いと感じオンライン合同新歓を発案しました」。こう語る岡田健成さん(養・3年)は、UT―BASE創設者の一人でサイトデザインも手掛ける。
担当の柴田光毅さん(養・3年)を中心に、合同新歓の趣旨や手順などを企画書にまとめ掲載団体に提出。同意した団体をSlackのワークスペースに招待し日程調整をしたあとTwitterやLINE@を用いて新入生に宣伝。LINEグループを通じ文系はほぼ全クラス、理系も10〜15クラスに告知できた。
合同新歓は4月5日と12日に実施。当日は各団体がZoomで説明会を行った。「初回でのトラブル対応が大変でした」と柴田さん。事前に各団体にマニュアルを渡しテストを推奨するなど備えるも、当日技術的トラブルが多発。新入生からも多くのSOSが届き、対応に追われた。
初回後のアンケートを参考にサイトを改良。インカレ団体ではZoomのログイン規制を解除し他大生の参加を可能に。さらに、説明会の間の待ち時間に各団体の紹介記事を読めるよう説明会への参加と記事閲覧のボタンを並べた。初回の評判からか第2回から加わった団体もあった。
イベント後、あるサークルでは加入希望者が殺到し史上初の加入選考を行った。代表の鈴木大雅さん(経・3年)は「これまではその団体に魅力を感じる人たちをうまくマッチングできていなかった」とUT―BASEの活動の重要性に気付いたという。
「今回のシステムは今後もそのまま使える」と鈴木さん。春新歓が難航した本年度は例年以上に秋新歓に注力する団体がある可能性も。「規模は小さくなるかもしれないがニーズがあればまた企画したいです」。マッチングの他にも、LINE@等でのイベント告知、サークルの垣根を越えたオープンな交流のプラットフォーム化など「成長したい東大生」全体に向けた活動を構想している。
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東京大学新聞社もUT―BASEの合同新歓に参加した。以前より社内体制のオンライン化が進められていたこともあり、新歓も全面的にオンラインで実施。取材体験などの企画が中止になり、当面新入生は実際に足を運び取材するという活動の醍醐味の一つを体験できない。代わりにオンラインで上級生と共に記事の企画立案を体験するなど新たな新歓企画を実施している。
学生の声
東京大学FGA
本年度はサーオリ、新歓ライブ、新歓合宿が中止に。サーオリの代わりにYouTubeで活動内容や今後の予定などの説明やライブ映像を配信。チャット機能で質疑応答も行い、リアルタイムの視聴者は最大約70人いました。東大の音楽サークルによる合同新歓プロジェクト「おとつど」にも参加し、Zoomで活動紹介をしました。
SNSは例年以上に活用しました。Twitterでは会員の好きなCDを紹介する連載企画や匿名質問への回答などを実施。新設したLINEやInstagramでライブ動画や新歓情報を配信しました。
ライブ演奏を実際に体感できる機会がなく、サークルの魅力をどう伝えるかが課題でした。例年比だと少ないですが、4月19日時点で40人強の入会者がいます。今後は状況が収まり次第、新歓ライブなどのイベントを改めて開催しようと考えています。(談)
東京大学運動会 アメリカンフットボール部
テント列以降他大との新歓試合などが中止となり、簡易版アメフト体験会は延期。例年駒場Ⅰキャンパスで行う生協コンパはオンラインに代え、監督・コーチの話や新歓ビデオを配信予定です。新歓特設サイトを作ったり集客向上のため他団体と合同でオンライン説明会を開いたりもしました。
SNSでは、新歓期間を延長して過去の試合やポジション紹介の動画などを投稿。また、LINEグループを作り、例年は部室で行うトレーニングのメニュー共有などをしています。
新入生を無差別に会食に誘うなどの勧誘が今はできません。興味を持っても部の様子を直接見られないと入部を決めづらく、今年の入部確定者は2、3人。経験のない難局で知恵を絞るのは大変ですが、部の気風に合っていますし、ここで生まれたアイデアは次に生かしたいです。今後は対面が解禁され次第改めて新歓を行う予定です。(談)
新入生
例年は諸手続き当日に「テント列」というイベントで勧誘を受けると聞いていたので、積極的に情報収集をしなくても平気だろうと考えていました。しかし新歓企画が軒並み中止となり、先輩やクラスメートからお薦めを聞いたり、東大のサークルが検索できるアプリUTmapを活用したりして情報を集めました。
オンラインでの新歓は直接顔を合わせずに済み、気楽に参加できました。周りではTwitterで同じ新入生と情報交換した人、中高の先輩の勧誘でサークルを決めた人もいました。
サークル選びの際には、初心者歓迎ムードがあることと女子が多いことを重視。現在は運動系と学術系の2団体に入ろうと決めています。(談)
この記事は2020年5月12日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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東大新聞オンラインPICK UP:映画編
著者に聞く:『現実を解きほぐすための哲学』小手川正二郎准教授(國學院大學)
東大CINEMA:『コンテイジョン』
キャンパスのひと:大塚遥輝さん(文Ⅰ・2年)
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