1952年前後は、地球システムに対する人為的影響の急増が全球でほぼ同時に起こった「非公式の人新世」の開始点と捉えられることを、加三千宣(くわえ みちのぶ)教授(愛媛大学)と東大、オーストラリア国立大学、松山大学、京都大学、島根大学、産業技術総合研究所の共同研究グループが明らかにした。成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』に掲載された。
これまでも、人が地球システムに根本的な変化を及ぼした最初の年代を地層から認識する試みがなされてきた。しかし、人為的影響は全球で同時に起こるものではないこと、気候変動や種の大量絶滅などの指標によっても地球システムの根本的変化の年代は異なることから、人類が地球システムを圧倒し始めた一時点を特定することは困難だった。
今回の研究では、地球システムの根本的変化の年代を決定する指標として、地層中にある人為的影響を示す痕跡数の急増を利用した。痕跡数の累積値の記録から、人為痕跡の前例のない急増が1952年前後に始まったことを発見した。人為痕跡として検出されたのは、これまで地球上に存在しなかった人為起源物質や生物種の最初の出現、生物群集の大きな変化が起こった点など。世界137か所の地層記録から748個の地層中の人為痕跡を検出した。
1952年前後から5年間ほどの人為痕跡の急増時期に続いて、多くの化学的指標における増減傾向の変化の始まりや加速、完新世にはない気候変動など、長期に及ぶ地球システムの変化が始まる。このことから1952年ごろの全球での人為痕跡の急増は、人類活動がこの時期から地球システムを圧倒し始めたことを示唆すると結論づけた。
人為痕跡に基づく、地球システムに対する人間の影響の明確な開始年代の設定は、完新世の次の時代である人新世の始まりを議論する手がかりになることが期待される。