中央教育審議会(中教審)は12月22日、高等学校教育、大学教育、大学入試の一体的改革について下村博文文部科学相に答申した。現行の大学入試センター試験を廃止し、思考力・判断力・表現力を中心に評価する新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を2020年度より導入することを提言。これに先立ち高校生が自らの学習の達成度などを把握できるよう、希望参加型の「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の19年度からの導入も検討している。
多様な評価方法の導入を目指す
中教審は20年度より大学入学者選抜のための大学入学希望者学力評価テストと、高等学校基礎学力テストの導入を検討している。成績を1点刻みで評価する現行のセンター試験とは異なり、いずれのテストも段階別に評価する。各大学が個別選抜で「客観的な学力」のみにとらわれない多様な評価方法を導入することを促進するためだ。
大学入学希望者学力評価テストは大学入学希望者なら誰でも受験できる。「知識の暗記量の評価が中心」と中教審が位置付けた現行のセンター試験を廃止し、代わりに思考力・判断力・表現力などを中心に評価するテストを導入。2次試験に先立ち、大学で学習する上で必要な能力を網羅的に評価することを図る。多くの大学で入学試験に利用できるよう、設問の難易度は広範囲となる予定だ。
選択式に加え記述式も
受験科目は現行のセンター試験と同じく教科ごとのテストに加え、教科・科目の枠を超えた能力を評価するため、「合教科・科目型」「総合型」の問題も出題。多肢選択方式に加え、記述式設問も出す予定。
知識の暗記だけでは解けない問題を出すことで、知識・技能を活用して問題を解き、成果を表現するための思考力・判断力・表現力などを中心に評価できる。年に複数回実施され、実施回数や実施時期は協議中だ。
高等学校基礎学力テストは希望参加型で、高校生が自らの学力を客観視できるようにし学習意欲向上を図る。テスト結果は高校側の指導改善にも用いられる。基礎学力の証明として、進学時や就職時に大学側が使用することも可能にする。
受験科目には「国語総合」「数学Ⅰ」など高校の必修科目を想定し、科目選択受験も検討中。思考力・判断力・表現力も評価するが、学力の基礎となる知識・技能の質と量を確保する観点から、知識・技能を重視する。多肢選択方式が原則で記述式設問の導入は検討中だ。
高校2~3年生の間に年間2回程度の受験が可能。実施時期は夏~秋を基本とし、学校現場の意見を聴取しながら検討する予定だ。
社会で活躍する上で必要な「確かな学力」を
今回の改革の背景の一つには、センター試験の受験機会が1年に1度しか与えられないこと、1点刻みの成績評価方法が問題視されたことが挙げられる。改革により複数回受験が可能になると、大学が要求する基準を満たした学生が、自分に合った大学へ進学できる可能性が高まる。
中教審は社会で活躍する上で必要な主体性や思考力などの力を「確かな学力」とした。高校と大学を結ぶ大学入試を改革することで両者の連携を緊密にし、確かな学力を高校、大学を通して育成することを図る。また知識力だけに限らない確かな学力を評価できる新テストを導入するため、今回の答申を行ったという。
しかし、二つの新テストには懸念点もある。高校在学中に受験する高等学校基礎学力テストは、授業進度の早い高校の生徒ほど有利になり、受験者間で不公平が生じる恐れがある。新制度導入を進める中で、今後はこのような懸念点の解決が必要となるとみられる。
この記事は、2015年1月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。