学術

2020年11月12日

【リラックス……の前に慎重な検討を】 大麻由来成分・CBDの安全性と効果とは?

CBD(coffee)で提供されているグリーンスムージー

 

 9月10日、グローバルタッチ株式会社は駒場東大前駅西口前に大麻由来成分CBD(カンナビジオール)を含んだスムージーなどを販売するカフェ「CBD(coffee)」を正式にオープンした。一般社団法人日本カンナビジオール協会代表理事の伊藤俊彦さんから話を聞き、CBDの効果や安全性の実態に迫るとともに、CBD(coffee)店長でグローバルタッチ株式会社代表の下村亨太さんへ取材し、実際に記者がCBDドリンクを試飲した。(取材・趙楠)

 

CBDの専門家

安全な製品を市場へ

 

 日本カンナビジオール協会は2019年11月に設立され、以来昭和大学薬学部でCBDの原料および最終製品の安全性や有効性に関する研究を行っている。品質が十分だと判断した製品については認証マークを発行し、健全なCBD産業の育成・発展に努めている。

 

 「カンナビノイド」とは大麻草に含まれる化学物質の総称。うち、ほとんどを占めているのはTHC(テトラヒドロカンナビノール)とCBDの二大成分だ。医療用大麻などに含まれているTHCは精神作用を引き起こし、依存性があるため、日本では麻薬に分類され規制されている。一方CBDは多くの生理活性を持つが、レセプターへの親和性が低く、人体への作用が非常にマイルドだ。

 

 日本ではTHCの規制の他に、THCをほとんど含まないとされる大麻草の茎と種以外の部位から成る製品の所持は、大麻取締法で一律違法となっている。海外で売られているCBD製品は原料が茎と種から製造されている保証がないので、購入して日本国内に持ち込まない方が良いという。

 

 人体には至るところにカンナビノイド受容体が存在し、CBDはこれらの受容体に直接働き掛け、さまざまな効果を発揮することが期待されている。例えば、脳内の過剰な神経伝達を抑え、てんかんの治療やストレス緩和に効果的である他、抗酸化作用もあり化粧品にも積極的に取り入れる動きがある。しかし、一般的なサプリメントには見られない効果を期待して、医療目的で販売もしくは使用してしまうと、医薬品医療機器等法や景品表示法に触れる恐れがある。

 

 CBD原料にはフルスペクトラム、ブロードスペクトラム、アイソレートの3種類が存在する(図)。日本では規制の対象となっているTHCを含まない、アイソレートが主に輸入されている。しかし、外国からの輸入品には粗悪品があるのが現状で、原料メーカーと日本の輸入会社との間で大きな問題となっている。そのため、日本カンナビジオール協会にCBD商品の分析依頼が来るという。

 

 

 世界反ドーピング機関(WADA)は18年からCBDを禁止薬物リストから除外している。また、ワールドサーフリーグ(WSL)などがCBDブランドと提携を始めたように、CBDはアスリートの間で特に注目されている。しかし、CBD以外のカンナビノイド成分は禁止薬物のままであり、まだアスリートが安心して使用できないのが現状だ。

 

 日本カンナビジオール協会では医療用大麻の合法化をテーマとしていない。「CBDの安全性と効果が正しく認識され、安全な製品が市場に出回ることに努めていきたいです」と伊藤さんは語る。

 

伊藤 俊彦(いとう としひこ)さん(日本カンナビジオール協会代表理事)

 

駒場のCBDカフェの店長

より良い利用を提案

 

 下村さんは16年にグローバルタッチ株式会社を創業、ヘアサロンやミートボールショップの運営を開始した。17年からミートボールショップでスムージーのゴーストレストラン(デリバリー専門店)の経営も行うようになる。

 

 CBDの存在を知ったのは顧客に教えてもらったのがきっかけだった。「ストレスと経営の忙しさで増えてしまったアルコール摂取量を緩和させるためにCBDを摂取するようになりました」。「美容の本質的なサービス」の提供の一環として、18年には日本で初めてCBD商品のUberEatsを開始した。

 

 CBD(coffee)の立地として駒場東大前駅を選んだのは、UberEatsで渋谷区に配達でき、世田谷区や目黒区も射程に入るからだという。「渋谷から近いこともあり、SNSを見て外国人の方やお悩みを抱えた方がよく来ます」。年末から来年にかけて経営規模を拡大していく予定だという。

 

 店内にはスムージーだけでなく、CBDオイルやCBDのベイプ(加熱式タバコ)も陳列されており、デジタルカウンセリングサービスによって自分に合ったCBD製品や摂取量を知ることができる。

 

 カウンセリングでは性別、体格などのデータを入力し、普段のストレスの種類や生活習慣の悩みに基づいて自動的に結果が割り出される。経口摂取や吸入、皮膚への塗布などさまざまな摂取の方法があるので、用途に合わせて適切な製品を提案している。「発注する際にメーカーに確認し、1年以内に第三者機関が発行した審査番号が記載されている製品を扱っています」と安全性にも可能な限り配慮している。

 

 ドリンクは10種類前後のスムージーなどを販売。ドリンクとは別料金で中にCBDオイルを5滴垂らすことができる。記者は一番のお薦めだというグリーンスムージーを注文。CBDオイルは初心者向けのものを選んだ。CBDオイルの風味をよく楽しめるようにストローの中に垂らしてもらえる。CBD成分の濃い一口目を舌下に入れ、時間をかけて飲むと吸収されやすいという。

 

 ストローからスムージーを吸い上げるとたった5滴でも独特な植物の香りが鼻を通り抜けた。CBDオイルの香りは数回吸い上げる間は持続するが、飲み進めるとだんだん薄くなっていく。グリーンスムージーは小松菜、ほうれん草、リンゴ、バナナ、パイナップルが入っており、水を一切使用していないのでとても濃厚な口当たりだ。青菜のえぐみも感じることなく、バナナやリンゴの豊かな甘みが口いっぱいに広がった。

 

 CBDはリラックス効果があるので、摂取後は運転などを控えた方が良いという。記者も心なしかスムージーを飲んだ後は少し眠くなったので、授業前に飲むのは注意した方が良いかもしれない。

 

下村 亨太(しもむら こうた)さん(CBD(coffee)店長・グローバルタッチ代表)

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