東京大学新聞社とNewsPicksの共同調査から東大生のキャリア観を読み解く本連載。共同調査の最後では、職業や業界に対するイメージを探るため「社会的地位の高さ」を聞いている。そこから見えるのは、いわば東大生の職業観、業界観だ。
今回は業界ごとのデータ、職業や属性ごとのデータをもとに、東大生が「社会的地位」をどのように見ているのか考察していきたい。
女性は保守的?属性ごとに見える「違い」
調査ではまず、民間企業のうち以下の9業界について回答者が思う「社会的地位」を聞いている(平均値が高い順に並びかえている)。
このデータをもとに、東大生はインフラ・交通、不動産・建設、そしてマスコミ・広告といった典型的「日系大企業」に対する忌避感を抱いているのではないかということを本連載の初回で考察した。
対して、金融・証券やコンサルティング・シンクタンクの両業界に関しては他業界に比べて圧倒的な地位の高さを見出している。両者ともに、東大生の1割以上が志望業界に挙げる人気業界だ。
これもまた、回答者の属性によって評価の高低は大きく異なっている。
以前の記事でも紹介した通り、メガバンク、インフラ・交通大手、マスコミ・広告、地方銀行といった、いわば「固い」業種について、社会的地位の認識に性差が見られる。男性はこれらの業種を低く見積もるのに対し、女性は比較的高い点数を付けている。
その一方、文系と理系の間ではコンサルティング・シンクタンク、商社マンといった職業に対する認識の差が目立つ。また、表には記載がないが、商社マンはコンサル志望と非コンサル志望を比べたときに有意に差が出た唯一の職業で、コンサル志望の方が商社マンの評価が高い。コンサルと商社マンは似たような性格があると捉えられているのかもしれない。実際、取材したコンサル志望の東大生(経済学部内定・2年=取材当時)は「入社後に成長できるという点で、コンサルと商社で迷っている」と話していた。
また、民間企業への就職を希望している人とそうでない人とを比較すると、概ね文理の比較と同じような差がみられたのに加え、メガバンクの銀行員についても差が生じていた。
全体のデータの分布は以下のグラフから確認できる。
アーティストの評価に文理の差あり
次は研究者や教師、公務員といった公共的な職業に加え、作家・芸術家、そして「フリーランスのエンジニア」などといった属性についてだ。
前段で紹介したように、男性より女性の方が国家公務員、国際機関の職員といった一見「固い」職業に対して比較的高い点数をつけていることがわかる。また「フリーランスのエンジニア」に関しても男女で点数に差が出ているが、この原因は定かではない。
また、文理別に見た時に差が出たのが作家や芸術家といったアーティストに対する見方だ。文系は作家や芸術家に対して平均して3.5点程度をつけているのに対し、理系は3.0点ほどにとどまっている。文系と理系というバックグラウンドに起因する差だと考えられる。
民間企業への就職か否かという進路による違いは、統計的に有意なレベルでは生じていなかった。
男性は専業主婦に高評価?
そして、警察官、保育士や医師、弁護士といった職業のデータだ。
属性によって生じている差はそれほどないが、専業主夫/主婦に対する見方で生じている性差は注目の価値がありそうだ。女性より男性の方が専業主夫/主婦に対して高い評価をつけていた。この原因については議論の余地があるが、例えば、男性は専業主婦の母親の下で育っており評価が高くなっている一方、女性は自身が働きたいという意欲が大きく影響している可能性が挙げられるだろう。
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成長してきた環境による違いはもちろんのこと、専攻分野、考える進路によって職業やキャリアに対する考え方は違っている。
本稿では、特に職業への評価の違いを概観してきた。性別による差は直感的にも理解できるが、文理の違いによっても職業に対する考え方が違うのは興味深い。特に作家、芸術家といったアーティストへの評価の違いは解釈が難しいが、注目に値する。連載3回目で見てきたように、やはり東大生は一枚岩ではないのだ。
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