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2021年5月24日

【イマドキ東大生のキャリア観】④ データから見える東大生の意外な意識

 東京大学新聞社とNewsPicksの共同調査から東大生のキャリア観を読み解く本連載。前回までの3回は詳細な分析を行ってきたが、今回は東大生の就活意識について、解説を加えながら単純集計したデータを紹介したい。

 

東大生は本当に「主体的」?

 

 まずは、回答者全体を対象として行った、キャリア観に関する設問だ。自己認識や意識を探るため、以下の4つの質問を行っている。

 

・将来の自分に対して悲観的ですか、楽観的ですか。(数字が大きいほど楽観的)

・自分には社会を変える能力があると思いますか。(数字が大きいほど能力がある)

・あなたは、自分が日本の将来を担うエリートだという意識を持っていますか。(数字が大きいほど意識が強い)

・あなたの人生にとって、安定と挑戦はどちらが重要ですか。(数字が大きいほど挑戦志向)

 

 いずれも5段階で選んでもらったところ、全体の分布は以下の通りになった。

 

 

 また、全体の平均と属性別の平均は以下の通りになった。

 

※ 色をつけた部分は、統計的に有意な差が見られる部分。

 男女の差、そしてコンサル志望とそれ以外の差はこれまでの分析で紹介したが、文理の差は目新しいだろう。文系と理系を比べると、文系の方が将来の自分に対して悲観的だった。しかし、この設問と次回分析を行う「社会的地位」に関する設問を除いて文系と理系の回答の差は見られず、原因を明らかにすることはできなかった。

 

 また、キャリア観に与える影響が大きいものについても選んでもらった。(二つまで複数選択可)

 

 

 9割近い東大生が「自分自身の体験」を挙げ、それに「社会一般の評判」(約3割)が続く。一見すると、自らの経験という主体的な要因を基にキャリア観を構築しているように見えるが、実態はそうではない。選択した組み合わせの内訳を見ると、「自分自身の体験」を選んだ人のうち26.0%は「社会一般の評判」、15.5%は「親の価値観」、14.0%は「周りの友人の目」を同時に選択しており、必ずしも主体性のみに基づいてキャリア観が形成されたわけではないことがわかる。

 

 

企業によって全く違う「イメージ」

 

 調査では、いくつかの企業についてイメージも調査した。IT業界を中心に、近年東大生の就職先ランキングで順位の変動が激しい7社を選定している。

 


 この調査で、企業によるイメージの違いが明らかになった。日々の生活に欠かせないGoogleが平均点で5点中4点以上をつけたのに対し、サイバーエージェント、リクルート、電通の3社は3点を下回った。特に電通は2.23点と、今回対象とした7社の中で唯一2.5点を下回っている。

 

 そもそも「企業」そのものの認知度の違いも、今回明らかになったポイントだ。例えば、楽天やGoogleといった大手IT企業を「知らない」と答えた人はほとんどいない。しかし一般消費者向けにはAbemaTVなどを展開するサイバーエージェントについて回答者の15.8%が「知らない」としたほか、直近の株高に伴って日本企業の時価総額ランキングでみずほ銀行やオリエンタルランドと肩を並べるようになった医療系メガベンチャーのエムスリーを「知らない」とする割合は3割以上にのぼっている。

 

就職活動の情報源は「人」

 

 ここからは民間企業への就職活動を行うとした198人を対象にした設問について分析していく。

 

 まず注目したいのは「就職活動にあたって最も参考にする情報源は何ですか」に対する回答だ。

 

 

 回答者の約4分の1がマイナビやリクナビ、外資就活ドットコムなどといった「就職活動専門のサイト」を挙げる一方、「周りの友人」や「アルバイトやインターン先の社会人」、「親」といった人を挙げる回答が半数を超えた。もちろん回答者には学部1、2年生など就職活動を経験していない人も含まれているとはいえ、注目に値する結果だ。

 

 東大生は就職活動にあたって「人」を頼りにするらしい。

 

東大生はどんな企業がお好き?

 

 ベンチャーと比べた時に大企業を志望する度合いについて5段階で聞いた質問では、4と5つまり「大企業」を比較的志向する人が7割近くにのぼり、1、2つまり「ベンチャー企業」を志向する人は2割にも満たない。

 

 また、日系企業と外資系企業のどちらがいいか聞いた設問では、日系企業を特に志望する人は約2割、外資系企業に関しては約3割にとどまっていて、残りの約半数は「どちらでもよい」としている。

 

 

 東大生が挑戦志向であること、ジョブ型雇用における「新たな安定」を志向していることが本連載の初回に行った分析で明らかになった。そこでは銀行など伝統的な日本の大企業に対する東大生の忌避感の強さを指摘したが、だからといってベンチャー企業を志向しているわけではなく、あくまでIT企業やコンサルティングファームといった非伝統的な大企業を志向しているにすぎない。その点で、伝統的な日系大企業内部の環境や文化といった点の改善が求められているといえそうだ。

 

【連載 イマドキ東大生のキャリア観】
  1. 新たな「安定」は自分のスキルで得る
  2. 東大生はなぜコンサルへ?
  3. 東大生を分かつ「大いなる資産」
  4. データから見える東大生の意外な意識 <- 本記事
  5. 独自データで明らかにする東大生の「職業観」
  6. 起業する東大生は何を思う?

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