高校時代は化学部の部長として研究に没頭していた。水酸化鉄(Ⅲ)コロイドの研究を進めるうちに、疎水コロイドを含む金属イオン溶液にろ紙を浸けると2層に分離し、その分離比から金属イオンの濃度が決定できることが分かった。この測定法で特許も取得。しかし「顧問の先生や部員たちの協力があってこそです」と感謝を忘れることはない。
実験の結果を自分の目で確かめられるところが化学の研究の魅力だと語る。「今後は工学部化学生命工学科で生物の知見を応用して高分子をデザインし、最終的には自分の実験の結果で社会を変えていけるような存在になりたいです」と目を輝かせた。
豊かな発想の礎となるのは、正確な知識。一つ一つの事実を知っていくことで全体を貫く理論を帰納的に理解できることもあるという。東大に入学後、浮かれて着実な姿勢を忘れていた記者の背筋も伸ばされた。