香取秀俊教授(東大大学院工学系研究科)は9月9日、基礎物理学や生命科学、数学の分野で画期的な発見をした研究者を表彰するブレイクスルー賞の一部門である基礎物理学ブレイクスルー賞を受賞した。超高精度で時間を測定できる光格子時計の発明と開発に貢献したことが受賞の理由。同賞はコロラド大学のJun Ye氏も同時に受賞した。
香取教授の専門は光量子工学。香取教授の開発した技術では、150億年使用しても誤差が1秒未満に抑えられる光格子時計を作ることができる。光格子時計は量子コンピュータや相対性理論の実証研究、重力波、ダークマターの観測などに利用できる可能性がある。香取教授は今後の抱負と感想について「光格子時計の発明から現在に至る研究がこのような評価を受け大変光栄に思います。20年前に物理的な好奇心から始まったアイディアが、同僚、学生を含む多くの研究者の協力により実現しました。自然を観測する新しい手法として、光格子時計がその真価を問われるのは、まさにこれからです。この研究が、自然科学と、未来の社会に役立つ計測手法となるよう、今後とも精一杯、研究と応用開拓に精進してまいります」と東大のウェブサイト上で述べた。
「科学界のオスカー」とも呼ばれるブレイクスルー賞は基礎物理学、生命科学、数学の3部門から成る。基礎物理学ブレイクスルー賞は2012年に創設された。また物理学、数学の2部門では若手研究者に授与される「ニューホライズン賞」も用意されており、渡邉悠樹准教授(東大大学院工学系研究科)が物理学ニューホライズン賞を受賞した。ブレイクスルー賞の各賞の受賞者には300万ドルの賞金が授与され、受賞者が複数いる場合には分配される。過去には15年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章卓越教授(東大宇宙線研究所)も、16年に基礎物理学ブレイクスルー賞を受賞している。