東大は「多様な学生構成」を目標の1つとしているが、いまだに地方出身の東大生は少なく、2019年度一般入試の女子の東大合格者は510人で、全体の16.9%にすぎない。東大を目指す女子学生を増やすため、2010年度から「在学女子学生による母校訪問」という事業が始まり、特に地方高校出身の女子の参加が呼び掛けられている。今回は記者自身が母校訪問を実施するとともに、母校の進路担当の教諭に話を聞き地方高校の現状に迫った。その様子を2回に分けて送る。
大学進学とともに上京し、忙しくも充実した日々を送る記者のもとに、ある日高校の恩師からメールが届いた。「『東大生・京大生と語る会』に参加しませんか?」
記者の母校、北海道札幌南高校は「堅忍不抜」「自主自律」の校風のもと、例年現浪合わせて10人程度の東大合格者、50人程度の国公立大医学部合格者を輩出する、共学の公立校だ。毎年夏休み明けには卒業生が大学生活や大学での授業内容、高校時代の生活や受験勉強などについて話すイベントが行われる。記者も高2の時に参加し、先輩方の話に感銘を受けて勉強のモチベーションが高まった。そんなイベントに講師側として呼ばれるなんて、うれしい反面、後輩の役に立つ話をしなければと身が引き締まる思いだ。
恩師からのメールには続きが。「東大は女子学生が母校で講演等を行う場合補助が出ると思います」。確か高校時代に、オープンキャンパスでの女子向け説明会でそんな話を聞いたような……調べてみると「在学女子学生による母校訪問プロジェクト2019」の案内を発見。謝金や交通費の補助が出ることも確認し、早速申請して事前説明会に参加することにした。
事前説明会の終了後、高校生向けの説明用DVDの上映が始まった。その冒頭、ある東大女子が語った東大を目指したきっかけを聞いてかすかな違和感を覚えた。「周りも東大を目指す人が多かったので……」記者の高校時代、周りにいた東大志望者は決して多くはなかった。このDVDを見て、地方の女子学生はどれほど共感できるのだろう。DVDの使用は必須ではなかったため、自作のスライドで説明することにした。
母校訪問当日。共に講師役を務める男性の東大生・京大生の先輩方と教室に向かうと、高校生40人程度が集まり教室は満員状態。男女比は少し女子が多いくらいだ。少々緊張しつつも発表を開始する。
東大を志望した経緯、塾や部活、受験勉強など高校時代の話から入学しての感想まで、自分が高校時代に聞きたかったことを思い出して話す。受験生時代の夏に受けた東大模試の数学で3点しか取れなかったエピソードも紹介し、なるべく親しみを持ってもらえるように心掛けた。東京大学新聞社が毎年刊行しているシリーズ「現役東大生が作る東大受験本 東大2020 考えろ東大」を紹介すると、終了後に代わる代わる見本誌を手に取って見ている生徒たち。勉強法や模試について個別に質問をする生徒もいて、意欲的な後輩にこちらが刺激をもらった。
後日生徒たちの感想を問い合わせると「楽しかった」「パンフレットにはない生の声が聞けて良かった」「もう少し受験勉強のことが聞きたかった」「もっと基本的なことから聞きたかった」と十人十色。拙い発表だったが、後輩たちに情報を提供して、少しでも東大に興味を持ってもらえたならうれしい限りだ。
(②に続く)
※この記事に登場した現在発売中の『現役東大生がつくる東大受験本 東大2020 考えろ東大』。受験生でない方にとっても面白い情報満載の書籍ですので、ぜひ合わせてご覧ください。