横田知之准教授(工学系研究科)らはジャパンディスプレイとの共同研究で、静脈や指紋の撮像と、脈波(心臓の拍動に応じて伝わる末梢血管系内の血圧・体積の変化)の同時計測を1枚で可能にするシート型イメージセンサーを開発した。ウェアラブル機器への応用により、患者の取り違え防止や機器の小型化が期待される。成果は20日付の英科学誌『ネイチャー・エレクトロニクス』(電子版)に掲載された。
近年注目される医療現場でのウェアラブル機器利用は、測定したデータが患者本人のものかどうかを確実に確認する方法がなかった。そのため、指紋などの生体認証と、脈波などのバイタルサインの同時計測の実現が急務だった。従来のシート型イメージセンサーでは、ダメージを与えずに相互に計測機器を集積することが難しく、1枚での同時計測は実現できていなかった。
横田准教授らは、機器を損傷なく相互に集積する技術を開発することでシート型イメージセンサーを実現。有機光検出器(有機材料から成る光センサー)と低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(多結晶のシリコンから成る電子のスイッチ)を集積することで、高解像度撮像と高速読み出しを可能にした。
センサーは総厚15マイクロメートルと薄型、軽量で、曲げることができるため、ウェアラブル機器へ容易に組み込める。ユーザーの生体認証を行うと同時に健康状態の測定が可能になるため、セルフケアにおける「なりすまし」の防止や病院での患者の取り違え防止に役立つと想定される。
この記事は2020年1月28日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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