ビブリオバトル、という言葉を聞いたことがあるだろうか。ビブリオバトルとはバトラーと呼ばれる発表者が自分の面白いと思った本を持ち寄って5分間で紹介し、それぞれの発表後2分間の質疑応答を経て、参加者全員による一番読みたくなった本への投票で「チャンプ本」を決めるというイベントだ。
(取材・宮路栞)
柏図書館は9月29日、1階コンファレンスルームでビブリオバトルを開催した。柏図書館でのビブリオバトルは今年で7回目で、優勝すると11月25日に二松学舎大学で開催される柏市立図書館主催の「知的書評合戦(ビブリオバトル)」に出場する権利が与えられる。柏キャンパスの一般公開期間以外では初の開催となった今回、3人のバトラーが参加し本の魅力を熱弁した。
紹介されたのは、ウラジーミル・ナボコフの『賜物』、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』、井伏鱒二の『井伏鱒二全詩集』とバラエティーに富んだ3冊。『賜物』を紹介した山口真次さん(新領域創成科学研究科国際協力学専攻・修士1年)は作者の巧みな話の運びや言葉遣いをアピールし、天才作家・ナボコフによる言葉の魔術だと述べた。2番手の樋口諒(理学部物理学専攻・修士2年)さんは『銃・病原菌・鉄』のテーマ「大陸が違うとどうして文明が異なるのか」について解説し、「歴史というのは、いろんな知識を全部使って論理的に解釈する必要がある」とまとめの一言。最後のバトラーとなった鈴木歩さん(新領域創成科学研究科人間環境学専攻・修士1年)は『井伏鱒二全詩集』を紹介し、「夜に独りのときや殺伐とした気持ちになったときはこの本を読んでリラックスしてほしい」と語った。
投票によって優勝者に選ばれたのは、『井伏鱒二全詩集』を紹介した鈴木さん。誰もが井伏鱒二の名前は聞いたことあるものの「全詩集」と言われると身構えてしまうところを、柔らかい表現で魅力を語った点が観客の興味を引き立てた。柏市立図書館主催のビブリオバトルの出場権を得た鈴木さんは「うれしい。次の大会も頑張ってこの本の魅力を伝えていきたい」と話した。
今回のイベントを運営した小林幸志さん(柏図書館職員)に話を聞いた。
――ビブリオバトルの魅力はどんなところにあると思いますか
5分間の発表の中で紹介した本の魅力だけではなく、紹介者の考えや思い、特性が現れます。同じ本を紹介するのでも人それぞれ、同じ紹介の仕方はありません。本の内容と同時にバトラーのことも知ることができる点で、ビブリオバトルはとても面白いイベントだと思います。
――今回は柏キャンパスの一般公開ではない時期の開催でしたがどのような理由があったのでしょうか
この大会は柏市立図書館が中心となり、柏市内にキャンパスを持つ四つの大学図書館の市民開放をアピールするため各館で実施されているものです。柏図書館では一般公開の日に行っていましたが、一般公開の日だと学生さんが研究室の手伝い等をしていて参戦者が少なかったので今回は開催時期をずらしてみました。結果的にこぢんまりとした会にはなりましたが、その分会場全体が一体になってとても楽しい雰囲気のいいイベントだったと思います。
――東大生に向けてのメッセージをお願いします
閲覧室がガラス張りで一般開放も進んでいる柏図書館は、駒場や本郷とは違った魅力があるのでぜひいらしてください。ビブリオバトルは来年も開かれる予定です。みなさんの参加をお待ちしています。