2月4日に開幕を迎えた北京冬季オリンピック。前回大会で金メダルを獲得したフィギュアスケート男子の羽生結弦選手や、日本史上初の銅メダルを獲得したカーリング女子のロコ・ソラーレが出場するなど、今大会も氷上の熱い戦いに目が離せない。今回はカーリング、フィギュアスケート、アイスホッケー、スキー(ジャンプ、クロスカントリー、アルペン)の6種目について、各競技の「見どころ」を解説してもらった。第4回はスキー3種目(アルペン、クロスカントリー、ジャンプ)で、東京大学運動会スキー部による寄稿。(寄稿=辻龍太郎、上田謙太郎、後藤愛弓)
【アルペン】滑降する姿は躍動感にあふれる
アルペンスキーは旗、もしくはポールで規制されたコースを滑り降りるタイムを競うスキー競技です。タイムのみで優劣を競うため分かりやすい一方で、滑る姿はスピード感・躍動感にあふれ、見ていて飽きることのない競技でもあります。日本ではどちらかというとマイナーな競技ではありますが、ヨーロッパでは人気の高いスポーツで、競技人口も多いです。
今回の北京オリンピックでは男女別の個人競技5種目と、男女混合の団体競技1種目が開催予定です。6種目それぞれについて説明していきます。
まずは個人種目について説明します。1ターンの大きさやスタートとゴールの標高差などを基準に競技が決まっており、高速系と技術系に大別されます。
高速系には滑降(ダウンヒル、DH)、スーパー大回転(スーパーG、SG)の2種目があります。両者とも出場選手は時速100キロ以上で滑り降りるため、スピード感と迫力が満点な滑りを見ることができます。特に滑降は途中で大きくジャンプする箇所がある上、最もスピードが出る競技です。またスーパー大回転はスピードだけではなく、技術も要求される難しい競技です。
技術系には大回転(ジャイアントスラローム、GS)、回転(スラローム、SL)の2種目があります。高速系は1本勝負である一方、技術系は2本の合計タイムで競われます。なお2本目に進める選手は1本目のタイムの上位30名に限られ、1本目の順位とは逆(つまり1本目30位の選手から順番に)にスタートします。1本目からの逆転が起きるか、応援している選手が2本目に進出できるかなどが注目ポイントです。大回転は高速系・技術系両方の要素が求められるアルペンスキーの基本的な競技です。回転は他の競技とは異なりポールを倒しながら滑り降りる競技となっており、その様子はとてもアグレッシブです。同時に最も技術が求められる競技でもあります。
個人種目のその他の競技ではアルペン複合(アルペンコンバインド)があります。この競技では前半に滑降(またはスーパー大回転)、後半に回転の1本勝負を行い、その合計タイムを競います。アルペンスキーヤーは技術系または高速系どちらかのみに出場することが多いので、この競技では選手が普段自分の専門としない競技をする珍しい様子を見ることができます。
最後に男女混合の団体種目として、混合団体パラレルスラロームがあります。同じコースを二つ並べ、2人同時に滑って早い方が勝利となります。これを男女計4回行い、国ごとに勝敗を競います。2018年の平昌五輪から導入された新種目ですが、大変盛り上がる競技です。
最後に注目選手を紹介したいと思います。男子では絶対王者だったマルセル・ヒルシャーが19年に引退し、誰が優勝してもおかしくない混戦模様ですが、ノルウェー勢の活躍が目立ちます。技術系ではヘンリック・クリストファーセン選手、高速系ではアレクサンダー・オーモット・キルデ選手などの活躍に注目です。女子ではアメリカのミカエラ・シフリン選手とスロバキアのペトラ・ブルホバ選手両者の活躍が期待されます。
日本からは小山陽平選手、安藤麻選手、向川桜子選手が出場予定です。3選手とも主に技術系での出場が見込まれます。小山選手は今シーズンのワールドカップで8位に、安藤選手は昨シーズンの世界選手権で10位にランクインするなど、近年日本人選手の活躍も目立ちます。日本人選手の活躍からも目が離せません。(文・辻龍太郎)
【クロスカントリー】ダイナミックな走りに見応えあり
クロスカントリースキーは距離スキーとも呼ばれ、スキーを履いてアップダウンのあるコースを周りそのタイムを競う競技です。しばしば「雪上のマラソン」と例えられますが、持久力はもちろん、筋力、テクニックも求められるタフな競技です。トップレベルではベンチプレスを100kg上げながら、3000mを9分切りで走る選手がゴロゴロいるのだから驚きです。そしてその選手たちがゴール後にはバタバタと倒れ込みます。そんなクロスカントリースキーの魅力、見どころをご紹介します!
クロスカントリースキーにはクラシカル走法とフリー走法の2種類の走法があります。伝統的なクラシカル走法はスキー板を並行に保ち、足を前後に動かして進みます。一方フリー走法は走法に制限がなく、スピードスケートのように足を左右に動かしてより速いスピードで進むことができます。それぞれに難しさ、面白さがあるので、走法の違いにも注目して観戦するとより楽しめると思います。
今大会ではこの2種類の走法と、スプリント(1.5km前後)から50kmまで多様な距離の組み合わせで男女各6種目、合計12種目行われます。特にリレーやスプリント競技は一番盛り上がるので必見です。
競技の見どころは、冒頭で述べたような圧倒的フィジカルとそこから生まれるダイナミックな走り(滑り)です。また、レース中の駆け引きやゴール前のスプリント勝負も見応えがあります。特に男子ではここ数シーズン各大会で首位争いを続けるノルウェーのヨハネス・H・クレーボ、ロシアのアレクサンドル・ボルシュノフ両選手の勝負の行方も気になるところです。
注目の日本人選手は若きホープ馬場直人選手です。先日のワールドカップでは男子10kmフリーで自身最高8位に入るなど着実に実力を伸ばしています。他にも5大会連続出場のレジェンド石田正子選手や「走れるマッチョ」こと宮沢大志選手などが出場します。
非常にハードなこの競技は、レース中の応援がとても励みになる競技でもあります。ぜひテレビの前で「〇〇選手ガンバ!」と応援しながら見てください。選手たちに思いが届くはずです!(文・上田謙太朗)
【ジャンプ】新種目の男女混合でのメダルに期待
スキージャンプを行う競技は大きく分けて二つ、スキージャンプとノルディック複合の2競技があります。前者はジャンプで得点を競い、後者はジャンプとクロスカントリーの合計を競います。
スキージャンプ競技は、ジャンプを2本行ってその飛距離点と飛型点の合計の得点で順位を競います。飛距離点は基準となるK点(赤い線)との飛距離差でつけ、飛型点は空中姿勢、着地時のテレマーク姿勢、着地後のランディング姿勢をジャッジが1人20点満点で判定します。そして、この得点に風の状況やスタート位置の高さを調整し、得点となります。
複合競技は、ジャンプを1本行って同様に得点をつけ、その得点が高いほうからタイム差をつけて後半クロスカントリーを、個人であれば10km、団体であれば5km×4人のリレー形式で走ります。
北京五輪で行われる種目は、ジャンプが男子個人のノーマルヒルとラージヒル、男子団体のラージヒル、女子個人のノーマルヒル、そして新たに加わる男女混合団体になります。複合が男子個人のノーマルヒルとラージヒル、男子団体のラージヒルとなります。ノーマルヒル、ラージヒルはジャンプ台の大きさの違いで、前者だと90m、後者だと120m以上飛ぶサイズになります。
ジャンプ、複合競技は特に日本人選手が上位に食い込める競技なので、ぜひ日本人選手に注目してほしいです。男子のジャンプでの注目は小林陵侑選手。今大会で2回目のオリンピック出場です。2018-19シーズンでは、年末年始に行われる伝統的な「ジャンプ週間」で4戦全勝し総合優勝を成し遂げました。勢いは現在も止まらず、今シーズンも日本男子のワールドカップ最多勝利数を更新しています。そして、今年のジャンプ週間でも総合優勝を果たし、日本人初の2回目の総合優勝となりました。兄の小林潤志郎選手も代表入りしており、兄弟での活躍が期待できます。
女子のジャンプではやはり高梨沙羅選手と伊藤有希選手。高梨選手は女子のワールドカップが始まった2011-12シーズンから今年に至るまで、毎シーズン表彰台に乗り続けています。伊藤選手は先日行われたワールドカップの公式練習で、それ以上飛ぶと危険とされるヒルサイズ147m、男子ヒルレコード153mをも超える154mという飛距離を出しました。
男子コンバインドでは渡部暁斗選手。前々回のソチオリンピック、前回の平昌オリンピックでともに銀メダルを獲得した選手です。北京ではついに金メダル獲得なるか、見どころです。
そして今回から新しく追加された男女の混合団体。男女共に世界トップレベルのジャンプ選手が揃う日本チームはメダルが期待できます。
今大会ではジャンプやコンバインドの競技が連日開催されるので、日本人選手を応援しながら盛り上がってほしいと思います!(文・後藤愛弓)
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