学術ニュース

2022年12月4日

ラットのビートへの同期を発見

 高橋宏知准教授(東大大学院情報理工学系研究科)らの研究グループは、ラットも音楽のビートに合わせて身体を動かすことを発見した。さらに、音楽のリズムの多くが、ラットの聴覚を司る脳の一部の領域の活動と同期していることを解明。音楽やダンスの起源解明につながることが期待される。成果は11月11日付の米国科学雑誌『Science Advances』で公開された。

 

 人間は、音楽のビートに合わせて身体を揺らしたり手足を鳴らしたりすることがある。このような「ビート同期」運動はダンスの起源となるなど、社会的結束を強める役割を果たしてきたと考えられている。しかし、ビート同期の進化メカニズムは長い間謎に包まれていた。特に、ビート同期運動が身体と脳のどちらを起点とするのか未だ不明だ。

 

 実験では、モーツァルト作曲『2台のピアノのためのソナタ ニ長調K.448』を使用し、ビート同期運動の由来が身体と脳のどちらなのかを調査。

 

 身体由来だとする身体原因説ではヒトの歩行テンポと多くの音楽のテンポが共通していることが有力な根拠だ。身体原因説では、ヒトに比べて歩行速度の速い小動物はより速いテンポの音楽のビートに同期すると考えられる。一方、ヒトと小動物で共通する脳の動特性がビート同期を決めるとする脳原因説ではヒトも小動物も同じテンポの音楽にビート同期すると考えられる。実験の結果、ヒトとラットが似たビートに強く反応したため、同様の脳内メカニズムで音楽のビートを処理している可能性が強まった。ヒトとラットは脳の活動特性が共通していることを踏まえ、脳原因説が有力になるとともに、人間社会で発展してきた音楽が、動物種を問わず脳へ強い訴求力を発揮する可能性が示唆された。

 

脳のビート同期をうむ順応特性。120BPM付近で最も反応が強くなっている。

A:脳活動の例。B:数理モデルで明らかにした脳の順応特性。C:実験データと数理モデルのビート同期。(提供:東京大学 情報理工学系研究科 生命知能システム研究室)

 

 研究の成果は音楽やダンスの起源と発展を解明する重要な手がかりとなることが期待される。研究グループは今後、旋律やハーモニーといった音楽の他の特徴と脳の活動特性との関連の解明に取り組む予定だ。

 

 

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