硬式野球部が所属する東京六大学野球連盟が、試合中におけるビデオ判定および指名打者(DH)制を導入することが分かった。ビデオ判定は12日に開幕した今季から、指名打者制は来春から。
DH制導入により、各チームは守備につかない選手(指名打者)をスターティングメンバーに入れることができるようになる。投手に代わって打撃に優れた選手が打席に立つため、切れ目のない打線が実現することとなる。一方で、連盟で他大学と比べて選手層の薄い東大は攻撃力の相対的な低下が見込まれるため、攻撃の方針に変化が求められる。
しかし、DH制導入は東大にとって追い風となる面もある。遊撃では小村旺輔(経・3年)や樋口航介(理Ⅰ・2年)らがレギュラー争いを繰り広げ、一二塁間でも秋元諒(文Ⅰ・2年)、堀部康平(法・3年)、門田涼平(文・3年)ら走・攻・守の三拍子がそろった未来の中軸がしのぎを削る。今季は酒井捷(経・4年)、大原海輝(文・4年)、中山太陽(経・4年)という「打」で東大を牽引してきた「ベストナイントリオ」のラストイヤーとなるため、打撃に期待できる一二塁間の選手を複数起用できることは打線形成の上で重要だ。
また、外野でも長谷川優(文Ⅰ・1年)、伊藤滉一郎(工・3年)といった走力にも打力にも期待できる野手の他に、遠投120mを記録するという成瀬悠人(理Ⅰ・2年)ら守備力に抜きん出た選手らにもチャンスが生まれる。指名打者で特に打撃に優れた外野手が起用されることで、外野の枠が一つ空くためだ。高校時代は強豪校で中堅を担った長谷川、リーグ戦での中堅守備経験の豊富な守備職人・伊藤に、抜群の身体能力を誇る成瀬で形成するリーグ屈指の守備力の外野陣は、「ベストナイントリオ」とはひと味違った良さを持つ。
また、DH制導入は投手にとっても利点がある。すなわち、打撃練習に時間を割かず、投球練習に集中できるのだ。試合では、攻撃時に打席を気にせず休憩できるため、負担軽減が実現される。東大では来季以降も、松本慎之介(理Ⅱ・2年)、江口直希(工・3年)、佐伯豪栄(工・3年)、前田理玖(文・3年)らリーグ戦での登板経験が豊富で、充実した投手陣が形成される。これまで積み上げてきた実績に、さらなる鍛錬が積み重なれば、歴代の東大の投手陣でも屈指の鉄壁さを備えるはずだ。