硬式野球部(東京六大学野球)は12日、早大との開幕戦を戦い、1-4で敗れた。敗れこそしたが、昨秋の開幕戦で20-0と敗れた早大に善戦したことはチーム力向上の証。一方で早大には足を絡めた攻撃を幾度となく仕掛けられ、守備陣には課題が見える試合となった。(取材・撮影 山本桃歌、吉野祥生、戸畑祐貴、平井蒼冴、宇城謙人、森木将慧)
東大 0 0 0 1 0 0 0 0 0 | 1
早大 1 0 0 0 2 1 0 0 X | 4
ついに迎えた新シーズン。内田開智や山口真之介らが昨秋で引退した東大打線は、5番に秋元諒(文Ⅰ・2年)6番に荒井慶斗(文Ⅲ・2年)。9番に樋口航介(理Ⅰ・2年)と3人の2年生を起用するフレッシュな顔ぶれに。1回表の東大の攻撃は1番・酒井捷(経・4年)が四球を選んでスタート。先頭打者としての役割を果たすも、後続が続けず無得点。2回にも先頭の秋元が投手強襲の安打で出塁し、盛り上げを演出するも、下位打線が支えることができない。続く荒井慶はショートゴロ、正捕手・杉浦海大(法・4年)はライトフライ、8番・渡辺向輝(農・4年)はファウルフライと、凡打の山を築いてしまう。
試合が動く兆しが見えたのは3回表。すでに1点のリードを許す展開となっていたが、酒井があわやホームランという当たりを放つと、一塁起用された中山太陽(経・4年)もセンターへの大きなフライ。明らかに早大の大エース・伊藤樹を捉え始めた打球に、スタンドがざわつく。するとざわついたスタンドの期待に応えるかのように、4回表、2死から5番・秋元が引っ張った打球は、三塁側スタンドの期待をのせてレフトポール際へ吸い込まれた。リーグ戦初スタメンで中軸という監督の大きな期待に応える一打は、同点に追いつく会心のホームランとなり、試合展開を熱くする。
同点に追いついた打線に応えるかのように、東大の先発・渡辺も奮起する。2回裏に無死満塁の大ピンチを無失点で切り抜ける好投を見せていたが、そこから4回裏まで8者連続でアウトに打ち取る圧巻の投球。アンダースローから様々な球速帯の球を繰り出し、強力な早大打線を翻弄。的を絞らせず、次々とフライアウトに打ち取っていく、まさにアンダースローならではの支配的な投球を見せていく。

暗転したのは5回裏。渡辺は1死から走者を出すと、盗塁を決められピンチを迎える。流れが東大にあっただけになんとか抑えたいところだったが、次打者に安打を浴び与えたくなかった勝ち越し点を与えてしまうと、さらにその打者走者にも盗塁を決められ、ピンチが続く。渡辺はなんとか逃げ切りたい、そんな表情で気迫のピッチングを見せるが、2死からふらふらと上がった飛球をセカンド・門田涼平(文・3年)が捕球できず。その間に走者を生還させ、痛い2点目を与えてしまった。
なんとか踏ん張りたいところだったが、渡辺は6度の盗塁にエンドランを仕掛けてくる早大の攻撃に苦しんでしまう。慎重になってしまったか、ボール球が増えていき、カウントを悪くしてしまうこともしばしば。続く6回裏にも相手打線に1点を奪われ、苦しい投球が続く。しかし渡辺、7回で降板した早大・伊藤を横目に8回までを1人で投げ切り、エースの意地を見せる。
苦しみながらも強力な早大打線を抑え、1人で投げ切った渡辺に土をつけたくない東大。最終回に奮起する。代わった早大の投手・越井颯一郎の150km/h近い速球と、100km/hを割る遅球のコンビネーションに翻弄されるも、秋元、荒井が連続で出塁し、2死一、二塁のチャンス。打席に立ったのは7番・杉浦。後輩が作ったチャンスに「一発回答」で同点としたいところ。ファウルで粘り、6球目の勝負に持ち込むも最後はボテボテのキャッチャーゴロ。期待に答えられず、スタンドにため息がもれた。
試合に敗れこそしたが、昨秋に20点差で大敗した早大相手にがっぷり四つの戦いができたのは、東大の地力が向上したからに違いない。「勝ち点獲得」という大きな目標の達成は近いが、課題も露呈した。エース・渡辺のモーションを盗んだような相手の足を絡めた攻撃は、対策の必要に迫られる。また、早大に勝ち越しを許した後の門田への飛球など、「惜しい」プレーも見られた。次戦以降、東大がどのような試合を繰り広げるかに期待だ。