「今年の東大は何かが違う」。今春、硬式野球部(東京六大学野球)の試合を見に行った人なら、きっとこう思ったことだろう。昨年ようやく4年半ぶりの勝利を遂げたかと思えば、今春はリーグ優勝の明治大学からも1勝を挙げるなど12年ぶりの3勝を果たした。投打でどこに成長が見られたのか、分析する。(取材・竹内暉英)
全体の底上げ必要
現在の硬式野球部で、宮台康平投手(法・3年)の存在は欠かせない。キレのある直球を武器に強打者を打ち取り、リーグ4位の防御率2・05、同5位の39奪三振を記録。第40回日米大学野球選手権大会の日本代表にも選ばれており、六大学ナンバーワン左腕との呼び声も高い。
同じく防御率4位だった昨秋と大きく異なるのは投球イニング数。多くの試合を100球以下で降板した昨秋は計29回しか投げず、降板後に次の投手が打たれての敗戦が多かった。しかし冬に走り込みで体力を付け、今季は4完投を記録するなど44回を投げた。完投した4試合は全て1失点以内と、安定感も群を抜く。
もう一つの成長は、被本塁打の減少だ。昨季は自責点が付いた失点が全て本塁打だったが、今季は一度も本塁打を浴びなかった。
宮台投手にとっての次の課題は、1勝1敗で3回戦を迎えたときの登板だ。今季最優秀防御率を取った柳裕也投手(明大・4年)は、9試合に先発し72回1/3を投げて防御率0・87と圧巻の投球を披露した。宮台投手も「ひじの張りがなければ投げたい」と登板に前向き。短いイニングでも先発で投げられれば厳しい台所事情が一気に解決する。
宮台投手に勝ち点が委ねられる現状は、他の投手の力不足を浮き彫りにしている。先発で期待されていた最速148キロ右腕・山本俊投手(工・4年)がひじの故障で投げられず、主に2回戦の先発は柴田叡宙投手(育・3年)。昨秋は8試合で防御率3・00とチームを救ってきた右腕は今季、初戦の明大戦こそ6回2失点で勝利の立役者になったものの「1巡抑えれば良い中継ぎと違い、先発では同じパターンを続けると2巡目に打たれた」と、中盤に崩れる試合が目立った。
明大戦では3回無失点で勝利投手となった有坂望投手(文Ⅲ・2年)も、最初の2試合は計6回を1失点と好投したが「シーズン中に修正したフォームがはまらなかった」と後半乱れて防御率は10点台だった。宮台投手が44回を投げ自責点10なのに対し、他の投手計7人は68回で自責点68。東大の防御率は昨秋より悪い6・27で、他五大学平均3・15とは大きな差がある。
今季の投手陣は宮台投手以外にほぼいいところがなく、勝ち点のためにはこれまでの自分を覆す結果が求められる。浜田一志監督は「宮台の体力か2戦目の投手陣が勝ち点の鍵」と語る。「宮台頼み」にならないよう、奮起してほしい。
この記事は、2016年6月28日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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研究室散歩@都市交通計画 原田昇教授(工学系研究科)
連載小説:『猫と戦争と時計台』㉝
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