「大学生が中高生と関わる活動」といえば、塾講師や家庭教師が思い浮かぶ。しかし、「先生」とは違う立場で中高生を支援する場所がある。本郷キャンパスから徒歩1分、文京区からの業務委託を受けNPO法人カタリバが運営する中高生の秘密基地「文京区青少年プラザ b–lab」だ。
試験前の高校生が参考書を広げる隣で、別の生徒が好きな歌手について熱心に調べる。見守るのはb–labの職員と、生徒より少し年上の大学生。そんな不思議な空間のb–labは、中高生が安心して過ごせる場所を作るため2015年に開設された。放課後や休日に利用できる談話スペースの他、運動・バンド練習ができる場もあり1日約80人の中高生が訪れる。
b–labの特徴は、中高生自身が主体となって運営や企画立案を行うことだ。中高生のやりたいことを詰め込む毎学期末の「フェス」や、ダンスイベント、読書会などが開催されている。イベントの一つ、「探究アソビ場」は中高生が自由に自分の趣味について調査・発表するもの。近年学校で盛んに行われる「探究学習」をより自由な形で行い、ロックバンドの髪型についての研究など多彩な発表で盛り上がったという。
2018年から館長を務める白田好彦さんは、b–labを「中高生の居場所であり、ステージ」と称する。b–labでは、親や先生のような「タテの関係」ではなく「ナナメの関係」となる大学生らを中心に、中高生が安心できる空間を作り上げる。さらに中高生が自己肯定感を得るきっかけとして、自分の「やりたい」を実現する舞台としても機能する。「青春の1ページをデザインする使命を持っているな、と思います」
東大生も学生職員として活動に参加する。「どんな人にも居場所がある社会を目指したい」という馬場悠介さん(養・4年)は、8月からイベント運営などを担当。b–labは中高生の自己肯定感を高める場だが、馬場さん自身の助けにもなっているという。「中高生と友達になり、信頼されることがやりがいです」
子どもの頃は不登校気味で家族関係にも苦しみ、
この場での大学生は、中高生の上に位置する「先生」ではない。b–labには、身近な「友達」として地域の中高生と、そして自分自身と向き合う大学生の姿があった。
この記事は、2018年10月30日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。
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推薦の素顔:内野澤安紀さん(文Ⅰ・1年→法学部)
地域の顔 本郷編:b-lab
研究室散歩:@基礎有機化学 内山真伸教授(薬学系研究科)
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東大CINEMA:『プーと大人になった僕』
キャンパスガイ:徳野鷹人さん(理Ⅰ・2年)
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