紅山仁さん(博士2年)、酒向重行准教授(共に東大大学院理学系研究科)らの研究グループは、地球近くを通過する直径100メートル以下の小惑星を観測し、32天体の自転周期推定に成功したと発表した。地球近傍への小惑星到来のメカニズム解明につながることが期待される。成果は12日付けで『Publications of the Astronomical Society of Japan』(電子版)に掲載された。
地球などの惑星と同様、小惑星も自転するが、その速度が速すぎると遠心力で崩壊する。小惑星が太陽光を反射したり光を熱放射したりするときに自転周期が変動する現象「ヨープ効果」を考慮した上で、小惑星の自転周期には構成物質の強度に応じた限界があると予想されていた。各小惑星の直径と自転周期の分布が分かれば物質強度を知ることも可能だ。しかし、観測可能時間の短さなどから従来は自転周期の推定が難しく、その分布がヨープ効果を考慮した予測に従うのかも不明だった。
紅山さんらのグループは、木曽観測所の広視野動画カメラ「トモエゴゼン」を利用。発見した小惑星を直ちに追跡観測し、時間の経過に応じた明るさの変化から自転周期を推定した。推定に成功した32天体のうち、13天体は60秒以下の周期で自転。一方で、10秒以下の周期で自転するのは1天体にとどまった。ヨープ効果を基にした予測では、直径10メートル以下の小惑星は10秒以下まで回転が加速するとされており、結果と整合しなかった。従来のヨープ効果の計算方法では考慮されていなかった熱の伝わり方を考慮する理論に基づくと、観測結果を説明可能だとした。
今回の研究で自転周期の限界が発見され、小惑星には回転を抑制する仕組みが存在する可能性がある。小惑星が受ける作用を明らかにし、地球近傍に到来するメカニズム解明につながることが期待される。